寒の楽しみ

 

 

 

 

 

 寒の楽しみ

 

 

今は亡き彼は こんな寒い夜 夕方になると 必ず誘ってくれたものだった

鮟鱇や寒鰤 寒蜆に鰆 今が一番美味しい時だ 鮃や金目鯛なども旬だろう

野菜も魚も みな旬がある そんな旬を追い掛けて 偶には遠出することだってあった

「鮟鱇って 仙台様って言うの 知ってるかい」なんて昔の話をしながら 笑って暖簾を潜ったものだ

 

江戸の吉原で名を馳せた遊女・高尾太夫にぞっこんとなった仙台様(伊達候)は盛んに太夫に言い寄る

ところが全く首を縦に振らない高尾太夫に 何故かと強く問い詰めたら 契りを交わした者がおりますからと

烈火の如く怒り狂った仙台様は ついに高尾太夫を吊るし切りにしてしまった 嘘か眞か知らないが

そこから鮟鱇の吊るし切りから来て 仙台様=鮟鱇の賞味と言うことになっているらしい

 

何だか残酷な話であるが 実際に吊るし切りにしなければ切れない深海魚である

鮟鱇の顔は面白いし 事実彼の絵もあるが 鮟鱇は全身ゼラチンのような魚で 捨てるところが全くない

トモ(尾鰭) ヌノ(卵巣) 水袋(胃袋) エラ(鰓) カワ(皮) ヤナギ(頬肉) キモ(肝臓)

それら全部で「七つ道具」とされ これらに葱・独活・焼き豆腐・椎茸・シメジ・絹さやなどの野菜類を入れ グツグツ煮て賞味する

鍋将軍は当然金主の彼で 蕎麦汁と同じような割り下醤油を入れる時のタイミングは 誰も口出し出来なかった

淡白で 奥行きの深い美味しい魚で キモでトモ酢も作ってくれた こころから懐かしい味である

 

彼が 鮟鱇をお店に食べに行かなかい時は 紀伊国屋で大洗産の切り身を買って来て 泥臭さを取る作業を終えてから

我々を迎え入れてくれた 一度沸騰した湯に潜らせ 引き上げてから氷水に晒す それから酒を掛けておく手間を惜しまなかった

大勢集めて鮟鱇鍋をやる時は自ら築地の市場で 一本の丸のまま購入して来て 見事な手捌きでおろしていた

鍋と同じようにあったかいご性格で どこからその豊富な知識を仕込んでいるのだろうと訝しく思ったものだが 終生勤勉家で

経済人ながら文学が大好きで 日本古典文学体系(岩波書店版)を決して手放すことはなかった 

創造の原点は どんな場合でも古典からしかあり得ないといつもの口癖だった

 

今月の二十八日で やっと半年の月命日である あれからまだまだ日が浅い

まさか寒い雪原を 独りトボトボと歩いていやしないかと 近頃妙に気になって 夕べ夢を見た 

このブログは あなたが生きていた当時のまま再現しようとして あなたの文風をそのまま真似て書いている

だから精々あなたの好きな四季折々の旬のお話もたくさん出しますから きっと覗いて見て下さいね

 このブログを最も歓んでくれるのは 年老いたお婆ちゃんのお手伝いさんだけかも知れないが

それでも多くの人のこころにはまだまだあなたは生きているのですから

今日は鮟鱇鍋で あなたが鍋将軍ですからね せめてあったまりましょう!

 

 

私は あなたに ここでは遠慮なく 本心を書き綴って行きたいと思っています

 

                                                                          鮟鱇の吊るし切り

 

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