『和』ということ Ⅱ

                                        

 

 『和』ということ Ⅱ

 

 質素にして、礼儀正しく、人間味溢れ、贅沢を敵とし、神人あい和し、

深い信仰心に満ち、思い遣りがある日本の美徳を、小泉八雲は愛してやまなかった。

彼は天涯孤独な身の上で、アイルランドに生まれながら、ロンドン~ニューヨークへと放浪を続けた結果

日本にやって来て、松江でセツを得て、大人数の家族を養った。家族の愛に飢えていたのかも知れない。

家族が諍いを起こすと楽しんで見て、隣家に入った押し込み強盗と隣家のお婆さんの遣り取りも、

実に人間味溢れると言って楽しんだ。ハレン(Lafcadio Hean=小泉八雲)は、

左の目が瞑れていた片目であったことも余りよく知られていない。

松江から熊本へ、更に横浜へ移動し、横浜時代は記者として活躍していたが、

東京大学に招かれて、東大で教鞭を取り、多くの文学者を輩出させた。

その時も妻セツの身内を大勢連れて歩いた。東京市ヶ谷に住んだが、

坪内逍遥との関係で、最期早稲田で教鞭を取り、市ヶ谷が終焉の地となった。

子供の戸籍のことで悩んだ挙句、日本人として生きることを決意をし、

小泉八雲と名乗ったが、夢半ばにして果てている。

遺骨は松江に葬られ、日本人以上の日本人として生きたのではなかっただろうか。

時代は日清戦争から日露戦争へ、更に日本は軍国主義へ大きく傾斜して行く時代であった。

和の良さと列強に並ぼうとした日本国家との狭間で、八雲は辛かっただろうと思えてならない。

 

 同様な時期、アメリカ人学者・フェノロサと東洋美術の先駆者・岡倉天心は大和路の寺々をコツコツ調査していた。

廃仏棄却という比類なき大打撃を受けた佛教界の実態調査と美術群の発掘であった。

その結果国宝第一号となったのは、京都・太秦の広隆寺・弥勒菩薩であったのは言うまでもない。

二人は次々に日本の美術を発掘して歩き、所謂奈良学と呼ばれる先駆者達に深い影響を与え

精魂込めて、古都の美を再発見していった。

その後、和辻哲郎や写真家では土門拳や入江泰助達は先駆者の意図を発展させ、定着に至っている。

但しこれらの和の美発見は飽くまでも、世の中すべてが欧入和廃の気風の中であったので、

美の発見とは言え、一種の壮絶な闘いであったはずである。

政府が躍起となって海外進出し、国威発揚を希った時である。

戦わずして、彼等の勝利はあり得なかったのである。

つまり今現在でも『和』とは闘いの渦中にあって久しいわけであるのだ。

 

 一方柳田國男を初めとし、民間の習慣・習俗を研究する民俗学の台頭があった。

折口信夫が後からついて往き、その後民俗芸能に一心不乱に研究を続けた本田安次と言う稀有の民俗学者を

生み出した。宮本常一や和歌森太郎、更に『花祭り』の早川孝太郎もいた。

長足の進歩で、古来から守られ受け継がれて来たものに日の目を当てた。

文化の頂点に立つのではなく、民間の底辺の文化を丹念に調べ上げ、

本田安次は実に日本各地を4万箇所以上生涯廻り切り、長大な資料群を遺した。

現在民俗学は資料収集が一定の成果を挙げ、後学の研究を待つ時期にあるとも言える。

更にこれとても次々に喪失して行く中で、今よとばかり必死に闘って行かなければならない途上にある。

我々が簡単に『和』などと語れない辛酸を舐めたのであって、

現在でも『和』を追及することは、非情な覚悟と断固たる信念に基づいていなければならぬ。

 

 柳宗悦を筆頭に起きた『日本民芸運動』も忘れてはならぬ。

棟方志功・浜田庄司・河合寛二郎・芹沢銈介など、キラ星の如く輝やいた人達も忘れられぬ。

 

 幸いにも これら先哲の成果の上に我々がいる。

私達は今ここで二千年の歴史に改めて着目し、更なる闘いを挑んで行かなければならない。

急激な変化と変貌を遂げる世界の後にばかり付いて行く必要と余裕は全くないのだ。

冷静に着実に更なる勉強を続けて行かなければならない。

然しここに大きな味方がいることも併せて明記しておきたい。

江戸の国学者・本居宣長の存在である。

近代国家で辛酸を舐めることを余儀なくされた分野に、

きっと大きな夢と自負心を与えてくれるだろうと思える。

1776年7月4日に独立をした歴史の浅いアメリカとは大いに違っているわけで、

歴史のない国に後追い心中する必要は何処にもないはずであろう。

日本人よもっと自信と誇りを持って、死にモノ狂いで『和』の検証と発展と

そこから来る様々な創造に手を貸そうではないか。

世界中の通じる立派なことは まだまだ埋まっていると想像して戴きたいのである。

 

 

伊勢・いすヾ茶屋の水菓子

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