静かに熱く手を組んで~奥日光・小田代が原より

img036

img034

img035

img030

img032

 

 

              静かに熱く手を組んで~奥日光・小田代が原より

 

 奥日光の紅葉は未だ始まったばかり。例年より少々遅いと言う。土曜の夜奥日光に着いた二人は、大きなお風呂を貸切にして、乳白色の温泉に二人で思い切り足を投げ出し、恥ずかしいと言いながら、貴女も嬉々としてお風呂の中で泳ぐ。湯の乳白色に劣らない白い素肌が湯の中で踊る。子供のようにお湯を掛け合って騒ぐ。夜半深々と寒さが身に沁みて来る。ぐいと引き寄せ合って抱き合い暖を取る。すっかりお風呂の熱も晩酌の火照りもなくなって、それでも貴女は夢見心地。深夜ピ~~ッと鳴く鹿の声。貴女の長い黒髪を、私の肩口までいっぱいに引き寄せ、貴女の香だけで獣欲が去り、満ち足りて深い眠りにつく。

 朝四時に起こして、クタクタの貴女をどうにか着替えさせ、マイカーへ。戦場ヶ原の赤沼茶屋へ。漸く眼を明け出した貴女は、ピタリと身を寄せ、歩調もどうにか一つ。電気自動車に乗って、小田代が原へ行く。まだ真っ暗な広場には既に多くの先客がいる。よく観ると、カメラの放列を作っていた。私は馬鹿チョン・カメラのパノラマって言うヤツだ。次第に明けて来る。雲か靄か霞か低く幾筋もの糸の集団で棚引き、少しずつ色付いていた辺りがやっと見えて来る。5分置きに、風景の色彩が変化している。モネはこんな光の変化を何枚もキャンバスを立てて描いたのだろうか。貴女はやっと精気を取り戻し、じっと風景を見詰めている。あの真ん中の緑色した背の高い白樺が『貴婦人』と言う名の樹だよ。もう直ぐ黄色く色付く。ボッチボッチと見える紅い樹は、全部ズミの樹だ。もう少ししたら、下草が真っ赤に燃えるんだよ。草紅葉(くさこうよう)って言うんだ。やや饒舌に説明を繰り返す。振り返ると男体山の雄姿がはっきりと見えている。すると彼女の眼にうっすらと涙が。

 湿地帯の淵を手を繋いで歩き小一時間、赤沼に帰って来て、三本松レストランの駐車場にクルマを置き、裏の日光キスゲ苑から畑中の道を光徳牧場の方角に歩き出す。男体山が目の前にそそり立つ。小川の土手に吾亦紅の群生。だぁ~れもいないズミの原生林は真っ赤に色付いて燃え、私達も静かに燃えて手を組み進む。何度も立ち止まって抱き合い、愛し合う。ふと気がつくとアストリア・ホテルの庭へ。目線の先には、少ない牛馬が放牧された光徳牧場がある。朝未だ早いと言うのに、売店では牛乳を売っている。悪戯っ子のように、貴女はソフトクリームを食べる。アストリア・ホテルの中へ。露天風呂の入浴を御願いする。受付にある温度計を見ると、何と未だ零下。道理で寒いわけだ。男女別々の湯船に浸かる。ジュッジュと音がしそうな最初の湯加減。コナラやダケカンバの紅葉が湯船にハラハラと散っていた。しばらくして汗が出た頃「お~~い、いるかぁ!そろそろ出るよ~~」と掛け声を掛けると、元気な声で応じる。どうやら人はいないらしい。

 一人でクルマを取りに三本松へ。お土産屋の開店に合わせ、彼女を置き去りに。来た道を久し振りに駆け足で突っ走る。帰って来て彼女を乗せ、夕べの旅館に行き、遅い朝食。チェックアウト後、丸沼への峠道へ向かう。途中中禅寺湖が見える位置でクルマを止め、眼下に広がる戦場ヶ原とその先に中禅寺湖を観る。何度も来たいわと貴女が言う。竜頭の瀧の紅葉ももう少しか。どうやら華厳の瀧付近は既に客でいっぱいのようだ。今日は日光・輪王寺・陽明門も見ないで、早いうちに下山しようと、中禅寺湖畔の金谷ホテル別館前のカフェテラスでお茶をする。時間を調整し、日光二荒山神社へ。既に宇都宮・二荒山神社では秋の例祭が始まっているはず。男体山に登るお山参詣の祭事をメモしたり、祭祀の内容を書き写させて戴いたりして、吉田宮司にご挨拶し、早めに帰路に着く。登り専門のいろは坂はワンサカ混んでいるようで、早めの下山が正解か。高速道路を飛ばして帰る。途中彼女は可愛い無垢な顔をして深い眠りの中にいた。

 夕べひと晩自宅に泊まって、今朝早く彼女は京都に帰った。時代祭りには出ないけれど、平安神宮の社務所で庶務のお勤めのお誘いがあったら白装束で出ると言う。今夜は鞍馬で火祭りがある。今夜の京都は何時になく冷えるであろう。これが済むと京都の大きな行事の殆ど終わり、一気に暮れに雪崩れ込む。勿論京都のことだから、更に幾つかのお祭りがあるが・・・・・・。彼女に負担になるから、そんなに気にしないで何度も帰って来なくてもいいよと言ったら、私は妻です、少しの時間があったら来たいじゃないと。

尾瀬

ズミの実

 

広告
カテゴリー: 季節の移ろいの中で パーマリンク

静かに熱く手を組んで~奥日光・小田代が原より への2件のフィードバック

  1. (Kazane) より:

    わー、素敵な風景ですね。この中を、手を繋いで歩かれたのですね。もう、幸せいっぱいですね♪いい休日を過ごすことが出来て良かったですね。 一緒にいる時間は短いかもしれませんが、その分濃い時間を過ごすことができるのかもしれませんね。 >私は妻です、少しの時間があったら来たいじゃないと。  凛とした感じがいいですね。こんな風に言ってもらえるって、幸せなことですよね♪ 秋の景色と、お二人の様子に、心ふんわりさせていただきました(^^)

  2. 文殊 より:

            風音さま
     
     いやぁ ちとお恥ずかしいです。よほど削除してしまおうかと思ったのですが、
    馬鹿なことを書いた分もあってもいいんじゃないかと、腹をくくったつもりです。
    紅葉にはやや早く、多分今度の週末あたりが最高でしょうね。山は気温も雰囲気も、
    少々違いますから、いつもとはちょっと違う気分になるんでしょうね。しかも二人っきり
    だと、よけいに開放されるので、なかなかいいもんですね。
     
     横長写真の真ん中にある薄緑の立ち木が、貴婦人と呼ばれる白樺です。もう直ぐすると黄色く紅葉するでしょう。
    妻も久し振りにのんびりしたようで、よかったと思っています。そうですねぇ、時々しか逢えない変則的な
    夫婦ですから、普段からよけいにいとおしくなるのでしょうか。
     
     風音さまにも夕ひばりさまにも、是非ともあの数秒ごとに色彩が変化する朝の風景を観て戴きたいです。
    いつかチャンスがあったら、是非訪れてみて下さいね。今日も有難う御座いました!ペコリ!
     

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

%s と連携中