正月飾りの色々

 

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                                              注連縄造り 

 

 

                                   正月飾りの色々

 

 日本の正月には、トシ神さまをお迎えし、新年を祝う行事が全国的に何処にでもある。畑の多い山村や稲を作る農村や海に面して魚介を取って生計をたてるなど方々で、色々であるが、それぞれに豊作や豊漁を祈ることには変わりはない。それぞれにはそれぞれの特徴があって面白い。祭具などに表現された形や材料など、地方色豊かで、興味が多いのそそられるところである。

 

                                門松

 門松の松は常緑樹で、その緑は永遠のシンボルである。旧年のうちに門松を立てておくのは、トシ神さまを招く目標で、入り易くした目印(神の依り代=ヨリシロ)であるからである。東京では松竹梅を門松にしているが、愛知県や長野県などの山村地方では、日の出の当たる縁側に、榊(サカキ)二本を立て、そこに注連縄(シメナワ)を張りめぐらす。その中間に薪を積んで置く。その薪は、新木(ニュウギ)と呼ばれ、トシ神さまを迎えてから燃やす為とされている。山梨県では、ヌルデの木に、目・鼻・口を彫って人形のようにしてから立てる。それを門入道(カドニュウドウ)と呼ばれる夫婦の木偶である。

 

                               注連飾り

 正月に、家の内外に張り巡らせた注連縄は、注連縄の囲みの中だけは聖地であると言う印である。強い魂を持ったトシ神さまは、不浄を嫌う神で、玄関に張った注連縄の先の家の中には清浄である神様がいらっしゃると言う証拠なのだ。神社では秋に刈った稲の新しい藁(ワラ)で、改めて注連縄を作り、社頭を飾る。特にその注連縄は、上手に細工して、入舟の形にしたものが最も縁起がいいものとされる。京都・上賀茂神社の蓬莱飾りは、宝舟の形になっていて、本殿の真上に吊り下がっている。氏子の方々に奉納されるその宝舟に五本の白羽の破魔矢が刺してあって、その形の美しさは、芸術と言われるくらい格別であろう。

 

宝船

                       上賀茂神社の日本一美しい注連飾り

  

 

 処で古都・京都の門松は、案外簡素な飾りで、代々続いたお宅でも全く同じことで、根のついた松を使い、白紙を巻き、紅白の水引で〆るだけである。根がよくつくようにとの願いからだろう。更に一般では、竹の筒の真ん中の切り目を入れ花器のようにし、五葉松と南天と水引で結んだ枝垂れ柳を活け、門松とする。清楚で、大好きな門松であるが、近頃はアレンジとか、ヘンテコリンな作り物が出ているが、あれは何の情緒があるのだろうか。或いは福岡県では注連縄飾りを、放射状に編み広げて、翼を広げた鶴の形のこしらえ、正月の玄関を飾っている。

 

                                年棚(トシダナ)

 トシ神さまを迎える為に、神棚や仏壇とは別に『年棚』を設けている家を見ることがある。トシ神さまは縁起のいい吉の方角からやってくるとされているので、暦に合わせて方向を回転出来るようにしているのもある。なかなか合理的である。年棚にはトシ神さまの神符や榊の他、鏡餅・神酒などを供え物をする。床の間には、日の出か高砂の掛け物を吊り下げる。鏡餅とは、こうした年棚の変化したものであろう。鏡餅は昔の銅鏡から型を真似て、餅をこしらえるようになったのだろうと思う。元々は薄い円形であったのが、食生活が豊かになったせいで、部厚いお重ねになったと考えられる。その上に代々栄えると言う意味で橙(ダイダイ)を、不老不死のシンボルとして伊勢海老を、富をかき集める為に、串に指した干し柿を供えるようになった。ユズリ葉やウラジロの上に鏡餅を載せるのも、父子相続や夫婦共白髪の縁起から来ている。九州の漁村では家の出入り口に近いところに、一本の木を渡し、それに鯛や海草や大根などを吊るす。幸い木 掛け鯛などと呼ばれ、トシ神さまへのお供えの形をなしている。

 三重県志摩半島では、初日が出る方向に飾った榊とヤスを飾る。その中に洗米などを入れ、トシ神さまに供える。徳島県阿南町では、鏡餅と橙と干し柿は普通だが、豊漁を願う掛け鯛は、二尾で八の字に据える。鹿児島県大隈半島の幸い木でも、腹を合わせた二尾の鯛・櫻島大根・昆布などをお供えする。埼玉県秩父地方では、小正月の農家の縁側にアボヒボを飾る。アボとは粟の穂で、ヒボとは稗のことで、いかにも山村の風景である。

 

笑門

たこ絵

                      『蘇民将来』信仰の注連飾り

 

 

                                 小正月の作り物

 正月13日から15日までを、小正月(コショウガツ)と言う。農村では、豊作を祈って様々な作り物をする。稲作の盛んな処では『餅花もちばな)』、養蚕の盛んな処では『繭玉(まゆだま)』を作り、水木に小さなお餅をつけて、年棚を飾る。これも年の初めに、豊作をトシ神さまに願う予祝の縁起物である。餅を搗く臼には、神秘的な予知能力がある信じられていて、臼伏せの行事を行う。一升枡に米を盛り、その上に小餅を載せて、臼を伏せておく。その上に小餅を載せ、ひと晩中入れて置き、翌朝そっと見る。餅に米粒がついていたら、その年は豊作であると 。松の内(元旦から7日まで)も終わらない6日から、そのような占いが盛んに行われ、トシ占(トシウラ)が多く、我々に希望を抱かてくれる。尚注連縄飾りや松飾りや餅搗きでさえ、29日と31日は避けるべきだ。29日は二重の苦しみを背負うことを意味し、大晦日は一夜飾りと言って、大変に忌み嫌われるからである。何世代も、そして営々と引き継がれて来た正月の多くの行事は、住環境や家族構成などで大きく様変わりしているが、簡単に済ませて貰ってはならないのではないか。古い習慣の中にこそ自然への畏敬の念が色濃く残っているからである。

 

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