蝋梅と初参り

蝋梅

 

 

                      蝋梅と初参り

 

 お陰様で、今朝九時前に、パースから直行便で成田に到着致しました。さすがに日本は寒く、まるで冷蔵庫の中に入っているような寒さでありましたが、直ぐ会社に出向き、CEOへ報告。更に若干の仕事をしていると、CEOの特別なお計らいで十四日まで休みを戴いたところでして、早速午後退社し、真っ直ぐ実家へ。父や叔母に新年のご挨拶を済ませて庭に出てみると、蝋梅(ろうばい=当家のは内側の芯も黄色いソシンロウバイ)が見事に咲きほころんでいました。これは母が植えた形見の蝋梅で、数本の枝を折り束ねて、父を促して青山墓地へ。母への墓参です。特別な理由がない限り、例年元日には来ていたのですが、今年は遅くなったことをお墓に額ずきながら深くお詫びを申し上げました。お正月で三日間、春秋のお彼岸でそれぞれ一週間ずつ、お盆で三日間、母の誕生日と忌日、そして私を生んでくれたわけだから私の誕生日と、全部合計して一年で最低でも二十三回もある墓参の機会を、去年はたったの二度でした。何たる親不孝者でしょう。蝋梅を挿しながら、お水を掛け、お茶をさしあげ、お線香を手向けました。母に声を出してお詫びをし、今回の初入院が案外軽くて済んだことへの感謝と近況を報告をしてから、最後に妻や出来立ての赤ちゃんの健康のことを深々と御願いを致しました。父もじっと手を合わせておりました。

 京都へ行くんだろうと父に促されるように言われましたが、実家から京都へ電話すると、今日は着いたばかりだから明日にしまひょうと妻が言う。病み上がりの私の身体を心配してのこと。実際夕べの夜間飛行には少々疲れている。遠慮せず冷たいかも知れないが、明朝そちらに行くからと言い、許しを乞う。実家らしい叔母の手作りのお雑煮(焼いた角餅・小松菜・板蒲鉾・鶏肉・柚子一切れ・乾燥椎茸と昆布出汁のお澄ましにて)を戴き、何処となく母の味がして漸くほっとする。正月飾りは既に庭に纏められ小さなヤマになっているところをみると、十五日はドンド焼き(左義長)をすることだろう。少ない量だから消防署へ届ける必要もない焚き火程度。そして五月に退職し、今年から京都に住むかも知れないと初めて告げると、父も叔母も優しい顔をしながら黙りこくったままで時間が流れました。叔母は赤ちゃんはこちらで育てられないのねとポツリ。ここの跡取りは私なんだから、二人とも断じて独りにはしないからねと告げるのがやっとこさでしたが、バツが悪くて、再び何度か話し合いをしなければならないでしょう。

 帰りは遠回りでしたが、亡き主人のご自宅へ。仏壇に向かい般若心経を唱える。例年厳寒の越前から届く越前水仙のたくさんの花々が大きな仏間いっぱいに広がっていました。お線香の香りが遠くなるぐらい水仙の強い香りです。「なぁ、Ryuよ!それ相応なマンションを建て多くの賃料を稼ぎペントハウスに住み、いい気になったり自己満足していたらいけないよ!幸と言う字はなぁ、生まれた土地の土(上の字)と、今住んでいる土地の土(逆さになっている土)の両方の土の間に、二つの線があるだろう、それってね、生まれたところと今住んでいるところと常に行ったり来たりしていないと、幸って来ないんだと言う意味なんだよ」と主人が、私には特に、誰彼なくよく言っておりました。主人得意の言霊信仰だろうと私は聞き流すことが多かったのですが、今日の帰り道、何だか主人の厳しい優しさが寒風を突きぬけて頬を撫で、ジワリと来て涙をこぼしてしまいました。やっと冷たい部屋の自宅に着くと、まだ硬い蕾だった西王母の藪椿の花が、鮮やかに満開になっていました。

 

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蝋梅と初参り への10件のフィードバック

  1. gansan より:

    おかえりなさい。
    やっとやっと・・・ですね。

  2. 文殊 より:

          Gansanさま
     
     ご無沙汰をしておりました。やっとこさです。そしてもう一つやっとこさがあります。
    愈々今年6月頃から本番が控えております。身震いさえ致します。武者震いでしょうね。
    頑張りますので、Gansanにも是非ご協力賜りたいと存じています。ところでMiyokoさんは
    お父上さまの一周忌でご帰国されるのですか。Outlookがサーバーの都合で、海外まで
    届きませんでしたが、運悪くMiyokoさんのメールに失礼してしまいました。後ほど先方には
    改めてメールさせて戴きますが、多分間に合わないでしょう。もしお逢いするようなことが
    ありましたら、どうぞよろしくお伝え下さりませ。ご丁寧なメールを頂戴しながら失礼したと!
    あれこれよろしく御願い申し上げます!                (松)
     

  3. みつえ より:

    おかえりなさいませ
    ほっと いたしました・・・。
    こちらに伺って 蝋梅の記事 泣けました。
    そして 同時に驚きもしました。
    つい先ほど 蝋梅をあなた様にと 記事に載せてお贈りしたばかりです。すこし ゆっくりなさってね・・・。

  4. 文殊 より:

           野の花さま
     
     有難う御座いました。母にとっては、これでやっとお正月が来たと。
    蝋梅は蝋梅科蝋梅属で、蝋細工のような透き通った花びらが美しい。
    多くは濃い紅色の花芯ですが、当家のは中まで黄色い素心蝋梅で、
    春一番に咲いてくれるから、母が大好きな希望の花だったんです!
    明日から京都です。改めて何処にも行かず、二人きりでいようと。
    初詣は上賀茂さんだけ行くかも知れませんが、妻の容態だけ心配で、
    オロオロしっ放しです。そろそろ着床が安定したでしょうか。我が家の
    希望の星であります。お気をつかい戴きまして、どんなに感謝申し上
    げているか。有難う御座いました。今年もよろしく御願い致します!!
     

  5. (Kazane) より:

    硯水亭さん、おかえりなさい。回復されたばかりでの長旅、お疲れになったのでは。無事帰国され、私も、ホッとしました。蝋梅も、まるで、硯水亭さんの帰りを待ちわびていたかのようですね♪ 明日から京都とのこと。何よりも、奥様の笑顔が一番の薬ですよね。ぜひゆっくりなさってくださいね。週末は寒くなるようですし、ムリなさらずご自愛ください。 

  6. 文殊 より:

          風音さま
     
     散々ご心配をお掛け致しまして、本当に有難う御座いました。
    夜自宅に着くなり、Outlook Expressが使えなかったことを解決しましたら、
    約400通のメールが来ていました。大半が新年のご挨拶だったものですから、
    少し助かりました。皆様には悪いのですが、イチニイのサンでお出し致しました。
    でもまだまだ残っているのですが、今夜はやや疲れていますから、この辺で
    止めようかと。風音さんの元気を戴き。まじに元気になりました。本当です。
    風音さんもご主人さまと仲良くお過ごし下さりませ。僕たちは静かに過ごします!
    本当に有難う御座いました。身にしみています!
     

  7. 道草 より:

    無事にご帰国になり何よりでした。本来なら新婚初めての新年を、新妻と更に芽生えつつある新しい生命と共に過ごされた筈でありましたのに、遠い異国の地にて辛い焦燥の日々は如何ばかりだったかと、そのご心中を察して余りあります。当然ながら愛妻の許へと逸る心を、まず筋を通して父上にご挨拶、更には、母上の墓前へのご報告。その見事な律儀振りに加えて、その事をご容認されました奥様の潔い御心根に感服あるのみです。暫しの休暇を頂戴されたとの由。どうか、香の君と心行くまで久方のご邂逅を歓び合われることを念じております。今年の京都は、元旦こそ相当に冷え込みましたものの、その後の日々は、もう小春日和の様相が続いております。北野天満宮の寒紅梅が例年より数日早く綻び始めたのは好いとして、一昨日は気象台の蒲公英が咲いて、これは例年より50日も早いとの有様。暖かいのは結構とは申しましても、やはり冬は冬なりに、時には凩も吹き雪も降ってほしい、と願わざるを得ません。我が家のささやかな庭でも蝋梅が匂っております。およそ10年ばかり前に苗木を園芸店で買った小木ではありますが、玄関のドアを開けると甘い香りが漂って春の訪れを告げてくれます。硯水亭Ⅱさんは人一倍ご健壮とは申せ、病状回復から間もありません。どうか決して無理をなさらず、香の君とそして小さな生命と、暫しのご交歓の日をごゆるりとお過ごし下さい。
     
    「冬」   芥川龍之介
    まばゆしや 君をし見れば薄ら氷(ひ)に 朝日かがよふ
    えふれじや 君をしみれば蠟梅の 花ぞふるへる冬こそは ここにありけめ

  8. 文殊 より:

           道草先生
     
     いつもいつも励まして戴き、感謝の言葉もありませぬ。漸く妻の下にたどり着きました。悪阻があっても、お腹が少々出て来ても、机に向かう姿勢は一向に変わりなく、すっかり安堵致しました。ただ休む時、私の好きなサラサーテやバッハの音楽も生まれ来る子供に胎教に聞かせているようです。新幹線の中でも、妻の机の横でも、今日はずっと貯まったメールへ返事をしていました。書いても書いても尽きない量で、むしろ有難いことだなぁと思っております。ただ少々疲れが抜けていないので、妻の部屋の中を出ることもなく、静かに穏やかに過ごしています。
     
     可笑しいでしょう!当家のお墓参りはうるさいのです。どこの神社に行こうがお寺さんに行こうが、お願いばっかりする浅ましさはいけないよというんで、必ず先ず謝罪→報告→神(仏)と饗応→そして最後に御願いをしてもいいという昔からの教えでした。手抜かりなくしないと、子供時分でも叱られておりました。又早く逝った母のために、毎年櫻の時季には墓地の前に茣蓙を敷いて、お墓の母と花見をするんです。知らない人が見たら、アタマが可笑しいんとちゃうかとお思いになられるでしょうね。去年の私はお遍路の旅路にありましたから、父と一緒にお墓の前での花見は出来ませんでしたが、大抵私も参加します。父は母が死んでいないと。今でも信じています。『千の風』のようなものでしょうか。我が家の伝統です。母の墓地の傍には山櫻が植えてあります。よくぞ山櫻を植えたものだといつも父を褒めてあげるのですが、その度に何度も母と一緒に行った吉野の話を延々と致します。決して再婚の道をえばらなかった父ですが、それはそれで一つの生き方なのでしょうね。元気であっても、万一の場合でも、父へも又私は同じことをするでしょう。
     
     妻はパースで泣かれた時以外、至って元気で平気で、平常心を失っていませんでした。お腹が少々出ていました。あれこれ有難いことです。寒い寒いと言っていたら、義父がラクダの下着を貸してくれましたので、ツンツルテンなんですが、遠慮なく使わせて戴いておりまして、少しずつではありますが、寒さに慣れつつあります。週末はお天気が悪そうですね。小正月までには初詣を何とか済まそうかと思っております。パリで買った柔らかい薔薇の香りの香水をお土産に買ってまいりましたが、妻が気に入ってくれてほっとしています。この人はお飾りが好きではない人なのです。初詣までは妻と一つの部屋で、ノンビリとしています。妻は相変わらず本と向き合っていますが、至福の時であります。本当にお陰様です。今日も有難う御座いました!
     

  9. 銀河ステーション より:

    おかえりなさい。
    しばらく、仕事が立て込んでいまして(今年は、ほぼ正月返上でした)、ずいぶんご無沙汰してしまっていましたが、体調を崩しておられたのですね。
    無事、お帰りになられて何よりです。奥様も待ちかねておいででしょうね。
     
    象もお墓参りのようなことをする、と以前聴いたことがあります。まして人の子ならば、恩愛を受けた父母や、先祖のお墓参りを何より大切にするのは当然の道ですね。
    …と、思いつつも、僕自身は、半分勘当のような状態で家を飛び出してきた立場なので、なかなかお墓参りも思うにまかせません。
    親はまだ生きていてくれますが、誰よりも愛してくれた祖父母のお墓も、せめて1年に1度と思いつつも、故郷の敷居は高いです。
    このままでは「幸」遠し、ですね。ちなみに父の名前にも「幸」の字が入っていて、まさしく「幸」遠しですが…・。
     
    祖母は存命中、毎日、前後1時間以上かけて祖父のお墓に参っていました。お墓の前にしゃがんで、ずーっと祖父に語りかけながら、いとおしそうに墓石を撫でていたのを、今でも鮮明に覚えています。「こんな夫婦になりたいな」と思ったものです。
    3日後には、その祖父の25年祭になります。お墓参りのかわりに、せめて恥じない生き方をしたいと思っています。
     
    櫻灯路さんのお墓は、やはり東京でしょうか?
    せめて月命日くらいは、その方角に手を合わさせていただきたいと思います。

  10. 文殊 より:

            銀河ステーションさま
     
     主人の言うことは可笑しいでしょう!全く時々意味不明なことも言うものですから、傍にいてよく混乱しました。お墓参りについてですが、主人が言うには、またこんなお話もあります。どうも生きるのがうまく行かないなぁと思っている時は、すべからく横の関係が駄目になっているからと。身分の違いは全くなく、今生きとし生きるモノすべてが横の関係だそうです。そこに来て、先祖やこれから生まれ来る人たちは皆縦の関係だと言うのです。横の関係がうまく行かない時の特効薬はお墓参りをすることだ、そしてご先祖さまやこれからの人たちをその場で考えてあげることだと。何故なら、墓と暮らしの字は全く兄弟であり、たまたま土の中で生きているのがお墓の中にいる人で、おてんと様の日当たりの中で生きているのが暮らしなんだよと。縦の関係をちゃんとできないで、暮らしむきは立たないと言うのでした。何だか少々スピリテュアルな話になってしまいましたが、実際に主人は部下に、あなたのお宅のお墓は現在曲がっているから、すぐ直して来なさいとか言ったことがあり、驚いたことがありました。主人はそんな言葉遊びの中から真実を探そうとしていたのかも知れませんね。
     
     主人の遺骨はパウダー状になって、現在もジェラルミンの円筒の中に入ったままですが、一部の遺骨が、ご先祖が葬られている京都・御室の仁和寺に、御所車の中に入れて、ご先祖さまと一緒に眠っております。でも大半の遺骨はまだ千代田区一番町のご自宅にあります。櫻山計画が実行され、他の櫻の元に散骨をされたい方々とともに、そう言う一角を造りましてから、全部納骨(散骨)するつもりでいます。これは遺言でしたので、弟君(CEO)さまのご指導のもと、現在そうしてあります。
     
     誰よりもひと一倍優しい貴方ですから、いつかはきっとすべてが氷解されることでしょう。それまでは銀河ステーションさんの思った通りの道を頑張って進まれたらいいでしょう。多分多くのご先祖さまや奥様やお子様が貴方さまをお守りされていらっしゃいますから、勇気を持ってご自身の道をひた走って下さりませ!我々もきっときっと応援致しております。今年もいい年になりますように、心から祈念致します。頑張りましょうね。有難う御座いました!
     

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