母の日に

 

   薔薇・オールドローズ(バロン・ジロ薔薇・羽衣薔薇・モダーンクライミング(バター

 

 

                 母の日に

 

 去年、初夏の朝顔市のことで、若くして亡くなった僕の母のことを書かせて頂いた。あれからもう一年近く、早いものである。今年は特別に嬉しい。僕に新しく母が出来たからであり、嬉しくて仕方がない。愛する妻を生んでくれた尊大さは何にも代え難い。去年までの僕にとってカーネーションとは、純白でしかなかった。いつも母の日には母の墓参をして白いカーネーションをお供えし終わった。もう直ぐ三十三回忌になろうとしている。それが何と今年から新しい母がいるのだ。この母へ感謝を籠めて、鉢植えの紅いカーネーションは無論のこと、色とりどりの薔薇の切り花も一緒に贈らせて戴いた。この日曜日には届くであろう。妻との年の差より、義母との年の差の方が遥かに小さい。それでもいつも僕はお母さんと呼んで親しみを籠めて、そう呼んでいる。妻に似てスラリとした方だが、僕の実母とも、笑顔のどこだろうか表情が似ているように思われてならない。

 胸の熱く遠きところ、実母は年を経るごとに、一層若々しく美しくなって来る。小学一年生の初めての運動会の時であった。大粒の涙をこぼしながら、人目を憚らず大きな声で「頑張れ」と声援を送ってくれた母を決して忘れない。当時はとても恥ずかしかったが、今では一番の思い出なのかも知れない。僕は大きくなったよ、と。そして僕は母より既に長生きしている。いつも頭の中か心の中か、どこかに母がいる。時を経るごとに、いい思い出だけが全身を駆け巡り、依然としてどんな記憶も薄れることがない。母の匂いすら覚えている。

 そんな母を忘れるわけがない。去年から母が再生して生きてかえって来たのだと思いたい。いつもどこかで亡き母捜しをしているのだから。そんな男ってどうしようもないが、母は僕が死んでからも永久にずっと母であるのだし、そうしてこれからも若いまんまの母である。確かに義母に、どこかの情念で亡き母を重ねているのかも知れない。妻にそんなことを正直に話したら、優しく優しく許してくれた。どんな男にだって母はいる。そして何時までも母とともに生きているのだ。お母さん!有難う、今度転生したら、又僕を生んで下さい。義母はあなたが与えてくれた天からの贈り物!今年から、あなたの墓前には真紅のカーネーションを手向けましょう。日曜日、待っていて下さい。

 

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母の日に への8件のフィードバック

  1. 道草 より:

    私の母は96歳まで生きました。平均年齢を遙かに超えて、まさに天寿を全うしたと言えるのでしょう。ただ、晩年は私を自分の弟だと思うなど、子供の頃の母に還って行きました。人は歳を取れば子供に還る、というのは本当です。硯水亭さんの母上の心の中には、小さい頃の我が子が居て、その子はいつまで経っても子供のままだから、母上は我が子と弟とを間違えられることはないでしょう。義母も既に亡く、もうカーネーションを贈る母は、私には居なくなりました。今朝は朝から雨が降っています。柔らかな緑の雨です。明日になれば、この雨も上っていることでしょう。
     
    「五月と母」   サトウハチロー
     
    かがやきをさらに青葉にそえてゆく五月の雨はうつくしとつぶやきたまいし母なりき
     
    コバルトを川の水面(みのも)にときながす五月の空はうつくしとつぶやきたまいし母なりき
     
    やわらかに夜のわが家をおとずれる五月の風はうつくしとつぶやきたまいし母なりき

  2. Unknown より:

    こんにちは。去年までは白いカーネーション、今年からは赤いカーネーションをお母様の墓前に供えられると伺って、じーんときました。お母様、きっとお喜びになるでしょうね。そして、お義母様も新しい息子さんからのカーネーションと色とりどりの薔薇、さぞ喜ばれることでしょう。私の母はよくこう言います。「あなたたち家族が仲良く暮らしていることが何より嬉しい。それが一番の親孝行よ」と。自分も娘たちが生まれてからは、彼女たちが幸せなことが一番嬉しくて、母の気持ちがよく分かるようになりました。だから、硯水亭 Ⅱさん、お母様たちのためにも、たくさんたくさん幸せになってくださいね !

  3. 文殊 より:

           道草先生
     
     母のことになると、いつもどうしようもなくなってしまいます。高校生頃だったでしょうか。たった一度だけ血相をかえて父と言い合いをしました。いつも仕事のことばっかりで、お母さんと一緒にいれなかったお父さんのせいで、お母さんは早く逝ってしまったんだと喰ってかかったのです。最初は何も言わなかった父でしたが、そのうちあの温厚な父も怒り出し、まだ君には理解出来ないだろうけど、お父さんはどれごどお母さんを愛していたか、そしてあなたをどんなに愛していたかと滾々と言い出したのです。その時の父の顔は怒りから次第に深い絶望感に変化致しました。以来私は二度とことことを父に言うまいと決めました。それから父は浮いた話一つなく、生涯独身を貫きました。息子の私にはどんなに悲しい思いをしたことでしょう。愛する相手は母から山に変わりました。日本百名山を踏破するのが父の夢です。私は父に対する時、母のことを極力封印し、親子で一定のいい距離感をおくために、現在では同居していないのですが、何だかこれも将来過誤を残すような気がしています。
     
     先生の場合お母様は96歳まで生きられたのですから、それだけでも先生には徳があったということでしょう。羨ましいです。介護は決して楽ではないでしょうが、今日自宅で亡くなられる方は10%を遥かに切っているようです。昔はその逆だったのでしょうが、それだけ家族間の絆が薄くなって来たのでしょうか。或いは社会の構造そのものがそうさせないのでしょうか。私は父を母との思い出が残る自宅で精一杯見てあげたいと常々考えています。今日も有難う御座いました。サトウ・ハチローさんのお母さんの詩は天下一品ですねぇ。素晴らしい。そして最後の文言に「五月の風はうつくしと つぶやきたまいし母なりき」 爽やかに終わっています。いい詩を今回も有難う御座いました!

  4. 文殊 より:

            夕ひばりさま
     
     母のことは、いつでもどこでも自然に思い出されます。素敵な場所に行ったら、こんなところに一度でいいから連れて来たかったとか、美味しいものを頂戴すると、直ぐ母に少しでも食べて欲しかったとか、何十年経っても全く変わる事がない性癖になっています。だから僕の中ではちっとも死んでなんかいないんです。未だに思い出し、メソメソ泣くことがあるんですから、もうどうしようもないオトコですね。でもそれがあるから、どんな時でも何があっても乗り越えて来れたような気がします。これでも仕事の鬼のつもりですから。更に当社では定年退職が早い会社ですので、どうしても早く若手を育てたい思いが強くあるものですから、偶に鬼になるのはしょうがないのでしょうか。朝は殆どの社員の出社より早いし、役員会は時には朝6時から朝食を取りながらも普通になっています。あの時父にくってかかった僕が恥ずかしいです。父には悪かったなぁと今でも痛切に反省しています。
     
     「あなたたち家族が仲良く暮らしていることが何より嬉しい。それが一番の親孝行よ」、夕ひばりさんのお母さんも人を気遣い、本当にお優しいですね。浅草のチャキチャキの江戸っ子だったのでしょうね。岸恵子の着物姿が彷彿と想像されて参ります。多分多くのお宅のお母さん方も同じようなことを思っているのでしょう。やはり母は偉大ですね。そしてやっぱり人の親にならないと分からないこともあるのでしょうか、まだまだの若造ですが、妻と一緒に楽しい家庭を築いて参りたいと改めて決意したところです。有難う御座いました!
     

  5. (Kazane) より:

    心に響く文章を読ませていただきました。男性にとっては、母親はいくつになっても特別な存在なのだろうな…と思います。今度転生したら、又僕を生んで下さい…、こんな風に思えるって本当に素敵なことですね。硯水亭さんに愛されているお母様・義母様、とても幸せですよね。 私の夫は、就職してまもなく母親を亡くしたのです。白いカーネーションには寂しさを感じるようで、母の日にはいつも赤やピンクの花を選んで仏壇に供えています。母の日を前に、素敵な文章ありがとうございました!

  6. 文殊 より:

           風音さま
     
     いいえこちらこそ、いつも励ましを受けておりまして、どんなに感謝していることでしょう。
    去年の朝顔市の記事でも、母のことをコメントを書いて下さいましたね。貴女の優しさが身に沁みます。
    男性は皆そうかも知れませんが、特に僕の場合は突然亡くなった母でしかたら、あの時のことを思うと、
    もう駄目なんです。自動車事故だったこともありますが、後輪が顔を踏んだ関係で、顔の半分は見て
    いられませんでした。でも凄いテクニックがあるもので、お葬式の際にはすっかり綺麗にされていました。
    忘れようたって、全く忘れられないのです。僕の人生は母を引きずって生きて行くのでしょう。
     
     ご主人さまもそうでしたか。お仏壇に白いカーネーションじゃなくて、赤とかピンクとかお供えしているんですね。
    ご主人さまの優しさが見えるようです。明日僕はあれから初めて真紅のカーネーションを墓前に手向ける予定です。
    まだ一人では行けず、介添えが必要ですが、頑張って墓参をして来たいと存じます。
    ところでリハビリですが、あんな短時間だった固定されていただけで、こんなに弱るものでしょうか。
    膝中心の筋肉を鍛えています。まだ怖くて右足に重心を掛けられません。頑張りますね!今日も有難う御座いました!
     

  7. 良枝 より:

    こんばんわ。りんこです。
    お母様、きっと待ちかねてましたよね 笑
    お義母様もお花が届いて
    息子の優しさにじーんときていることでしょうね・・
    私はお酒が大好きな母に芋焼酎をプレゼントしました。
    とっとりのお酒で
    「なまけものになりなさい」と
    水木しげる書がかかれてあり、
    かわいいめだまのおやじが・・
    よろこんでくれました 笑
     

  8. 文殊 より:

           りんこさま
     
     
     よかったぁ。何よりもお母様が歓んだことでしょう。
    そんな名前の焼酎があるのですか。驚き桃の木山椒の木ですね。
    今日何とかして更新したかったのですが、諦めました。まだまだ
    僕には余韻がありますから。元気でいらっしゃるより、亡くなった人への
    鎮魂の思いが強いからでしょうか。我ながらびっくりしております。
    今夜はまだ会社です。遅くなると思います。でもいいのです。
     
     りんこちゃんにも早めにお幸せが来ますように、心底から祈っています。
    偶には鳥取のお話をしましょうね。楽しみにしています。

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