妻のこひしき

  

京都大学

 

 

                   妻のこひしき

 

 仕事が一段落し、堪らなく人恋しくなって夕方妻に電話した。相変わらず元気で、同じ時刻に就寝し、同じ時刻に起床する。特別真夜中まで勉強しない方が断然捗(はかど)るらしい。耳の痛いことである。今夜もこんな時間であれば、着ているものをきちっと折り畳んで枕元に置き、お腹の子とともに深い眠りに就いていることだろう。先日NHKのハイビジョンで放映された「お~い、にっぽん、私の好きな京都府」のビデオを観ていた。美山の鮎や空中から観た古都の珍しい映像が面白かったが、最後締め括り「ふるさとラプソディー」の中で謳われた旧三校の寮歌に思わず圧倒された。一校(東大)の「嗚呼玉杯に花受けて~」は聞き慣れた歌であるが、三校(京大)の「紅萌ゆる」(逍遥の歌)は初めて聞き胸がジーンと熱くなった。澤村胡夷という方が学生時代に書き上げた歌らしい。「紅萌ゆる丘の花 狭緑(さみどり)匂う岸の色 都の春に嘯(うそぶ)けば 月こそ懸(か)かれ吉田山 緑の夏の芝露(しばつゆ)に 残れる星を仰ぐ時 希望は高く溢れつつ 我等が胸に湧きかえる 千載秋(せんざいあき)の水清く 銀漢(ぎんかん)空に冴(さ)ゆる時 かよえる夢は崑崙(こんろん)の 高嶺の此方(こなた)戈壁(ごび)の原 神楽ヶ岡のはつしぐれ 老樹の梢(こずえ)伝う時 穂燈(すいとう)かかげ吟(くちずさ)む 先哲(せんてつ)至理(しり)の教えにも」 土井晩翠の詩にも似た美しく高邁な精神性を内包した若き人の歌唱である。早速妻に大学の寮歌のことを聞いてみた。何と11番目まであり、最後の歌は「見よ洛陽の花霞 櫻の下の男の子らが 今逍遥(しょうよう)に月白く 静かに照れり吉田山」で終わるのだと言う。あなたもきっと何か勉強したいはず、だから一緒に勉強しよととんでもない宿題を言われてしまったが、よく考えてみると、確かにそうである。主に東洋哲学を勉強したいとどこかに意欲がある。続けて妻は四年前、二人だけで初めて旅行した松本~上高地(帝國ホテルから河童橋辺り)~安曇野(荻原碌山美術館など)のことをしみじみ思い出したようで、松本市立の旧開智小学校の美しい校舎を思い出すのだと。文明開化の勢いで建てられた美しく豪華な建造物で、明治の人たちの教育に対する熱いものをヒシヒシと感じるとあの時彼女は熱く語っていた。

 

CIMG0896 の補正

 

  塩船観音さま周辺の農家から戴いて来たオカメアジサイの花が我が家の屋上ガーデンで花盛りである。文月の最初の週に新しい生命が誕生する予定で、妻と子に対し、さぁ頑張るんだぞという意味を籠めてこの写真を掲載させて戴いた。柔らかな朝の光に映えて美しい。どうか五体満足な子であったなら、それだけで充分でかしたと精一杯妻を誉めてやろう。この花に妻の香りさえ聞こえて来るような気がしてならない。更にあの「ふるさとラプソディー」で歌われたわらべ歌を思い出す。京都の子供たちの元気な声が耳について何故だか離れない。

 

  『丸竹夷<まるたけえびす>』(わらべ歌)

 丸竹夷二押御池(まるたけえびすにおしおいけ) 姉三六角蛸錦(あねさんろっかくたこにしき) 四綾仏高松万五条(しあやぶったかまつまんごじょう) 雪駄ちゃらちゃら魚の棚(せったちゃらちゃらうおのたな) 六条三哲(ろくじょうさんてつ)とおりすぎ 七条こえれば八九条(しっじょうこえればはっくじょう) 十条東寺(じゅうじょうとうじ)でとどめさす~~♪

 坊(ぼん)さん頭は丸太町 つるっとすべって竹屋町 水の流れは夷川(えびすがわ) 二条で買(こ)うた生薬(きぐすり)を ただでやるのは押小路(おしこうじ) 御池で出会うた姉三(あねさん)に 六銭もろて蛸買うて 錦で落として四(し)かられて 綾(あや)まったけど仏々(ぶつぶつ)と 高(たか)がしれてる松(ま)どしたろ~~♪

 寺御幸麩屋富柳堺(てらごこふやとみやなさかい) 高間東車屋町(たかあいひがしくるまやちょう) 烏両替室衣(からすりょうがえむろごろも) 新町釜座西小川(しんまちかまんざにしおがわ) 油醒ヶ井で堀川の水(あぶらさめがいでほりかわのみず) 葭屋猪黒大宮へ(よしやいのくろおおみやへ) 松日暮に智恵光院(まつひぐらしにちえこういん) 浄福千本はては西陣(じょうふくせんぼんはてはにしじん)~~♪

 女の子も男の子もみんなつんつるてんの和服を着て、両手を前後に振り元気いっぱい歌っていた。清々しい場面であり、京の都の子供たちはこうしてちっこいうちから小路(通り)などの名前を覚えて行き、これさえ覚えていたら迷子になりそうにないのだろう。単純なメロディーで私も直ぐに一緒になって歌っていたが、我が子もこうして覚えて行くのだろうか。祇園さんが終わり大文字が終わって、京都の夏のお祭りの最後を飾るのは子供たちの『地蔵盆(じぞうぼん)』である。我が子も小路小路の角々で他の皆さんとお地蔵さんにお手手を合わせ、一緒に駆け回るのだろうか。日に日に強くなって行く母親としての自覚、女は強しである。それに引き換え私は忙しい合間をぬってリハビリの情けない日々である。松井選手だってタイガー・ウッズ選手だって内視鏡での簡単な膝の手術であったのに、半年の療養ではやはり無理だったのだろうか。タイガー選手は今期絶望と聞く。だからこそ焦らず何とか頑張らねばならない。たおやかな妻の香りを求め、そして元気な赤ちゃんの産声を聞きに早く京都に行くべきであるのだから。恋しい!

 

 (お陰さまで超多忙な日々は昨夜で終了致しました。残された日々はCEOと二人だけでじっくりと過ごします。今日は温泉リハビリには参りません。午後から人に逢い、リハビリし、針治療を受ける予定で、夕刻からパーティです。でも『Anne』を早く読了したくて、要点を済ませたら、サッサと帰って参る所存です。無論明日もリハビリがありますが、頑張ります!)

 

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妻のこひしき への6件のフィードバック

  1. 道草 より:

    昨夜から朝方に掛けて久し振りの豪雨となりました。それでも、今朝の6時現在の琵琶湖水位は-16センチとなっています。増えるのはこれからでしようけど、今はすっかり晴れて暑い日が戻りました。ご勤務の方はやっと一段落が着いて、ほっと一安心されたことでしょう。新規スタートは来月からですか。奥様への心逸るお気持ちに併せて、リハビリの方も一刻も早く快方へと向うことを祈っております。本日のブログを拝見していますと、京都への思いや切なるものが伝わって参ります。今後は新しい仕事に加えて、専門分野の勉強も多々控えていることと思います。そんな日々にあって、またこんな遊びもいっそう鋭気を養え、奥様との直通の小路の続いているご様子がしみじみと感じ取れます。傍からの口出しは野暮と承知の上で、のこのこと寄せて頂きました。こんな数え唄もあります。
    「一条戻り橋」←昔(戦前)はこの辺りが縄張りでした。
     
    一条戻り橋二条の薬店(みせ)三条のみすや針四条芝居五条の橋弁慶六条(ろくじょ)の本願寺七条(ひっちょ)の蕎麦店八条(はっちょ)のおいも掘り九条の小便取り東寺 羅生門
     
    やがて祇園祭。お札売りの唄ですが、奥様はご存じでしょう。神功皇后を祀る「占出山」と、皇后が身重で新羅に出征した伝説があり安産を願う女性の信仰が篤いそうです。田には、「船鉾」にもあるそうです。是非、ご安産てあることを念じております。
     
    ご安産の腹帯はこれよりでますご信心のおん方さまはうけてお帰りなされましょうおろうそく一ちょう献じられましょう

  2. 文殊 より:

                道草先生
     
     
     今夜は早く帰って来ました。こんなに早く帰れるととても嬉しいです。周りの方々に注意が行き届くなり、嫌ですね、こんな忙しい思いをするのは。ちょっとお酒を飲んでいるのですが、梅雨の中休みでしょうか、はっきりしない天候が続いています。お昼ころは晴れ間も出ていました。世界の中で雨が一滴も降らない地方が多く、日本はとっても恵まれていると思いましょう。四季折々の美しさがあるのですから。今頃京都の大田神社では杜若が満開でありましょう。我が心の故郷・京都は本当に休めるところです。同時に私が謙虚になれる場所でもあります。生まれ来る子供の安寧を願って、今はひたすら祈る日々であります。男の子は何ていう名前にするか、女の子だったらどうしようか、などと話し合っておりますが、なかなかピンと来る名前はありません。でも義母や義父はあなたたちの子供だから自由につけていいと言ってくれています。京都にちなんだ名前にするか、全く違う名前にするか悩むところです。最初は妻の家で子供を育てるようになるでしょう。それが義父母の願いですから。東京の叔母は子供がいませんので、それはそうお願いすることにしました。わらべ歌のように優しいいい子に育ってくれればいいと、全く多くは望んでいません。生まれても決して喧しくいうつもりもありませんし、出来ることなら、早いうちから留学させたいと願っています。でも京都で過ごせるならば、それに過ぎることはないのでしょう。世界の京都ですし、パリには全く負けていませんので。早く赤ちゃんと対面したい気持ちでいっぱいです。素敵な詩や京都のわらべ歌を有難う御座いました。今後ともよろしくご指導をお願い申し上げます!
     

  3. (Kazane) より:

    硯水亭さん、こんばんは。ようやくお仕事も落ち着かれたとのこと。本当にお疲れ様でした。もちろん、これからも忙しい日々は続くのでしょうが。ご自分の夢実現に向けての忙しさは、充実した楽しさでもあるのでしょうね♪ もうすぐ、お父さんになられるんですね~。硯水亭さんのこと、奥様と相談して、お子さんに素敵な名前をつけられることでしょう。何だかとっても楽しみです! 名前には親のいろいろな思いがこめられているんですよね。 今年の梅雨空は、ふとした瞬間に青空がのぞいたり…。
    心楽しませてくれている気がします。雨上がりの植物は生き生きとして美しいですよね☆硯水亭さんの屋上ガーデン、素敵でしょうね♪ そうそう、マドンナなんて言っていただいて(*^_^*)何だか照れくさいです。全然そんなタイプではないですよ~。 本当に四季のはっきりした土地に住んでいるというのは幸せですね。

  4. 文殊 より:

             風音さま
     
     いいえ、風音さんは僕らのマドンナです。貴女がいなかったら、世界は真っ暗闇の中にあったでしょう。僕は父親になる資格があるかどうか分かりませんが、でもお気ばりやすという京言葉がある通り、この際気張っていなければならないでしょう。妻のことを思いつつ、赤毛のアンの最終章を読み出しています。風音さんは僕らのマドンナです。どうかそれだけはお許し下さりませ。
     
     読書の早い遅いはあるでしょう。でも僕の速読法は案外色んな方に応用出来そうです。先ずチラリと頁をめくり、その後その頁のいいところを復習します。そして記憶に留めるか、或いはメモ書きするか、そんな繰り返しです。確かに僕の読書は早いのですが、英文であっても和文であってもおんなじです。仏文もそうです。ザラッと頁の要約を見て、それから考える方法を択んでいます。一度お試しを!
     
     名前はもう実は決まっているのですが、どっちが生まれるか、未だ分かっていませんので、公表しないことにしています。無論生まれたら公表しちゃいたい方ですが、今は楽しみにしておきましょう。風音さんの激励にいつもパワーを戴いております。貴女がいなかったら、楽しみは半減するでしょう。貴女のためにもいいお子を生んで欲しいと念願しています。
     
     僕の屋上庭園はたいしたことはありません。何と言いましても屋上に庭園を造るとなったら、資金が懸かるので、そこそこの水対策をしてやっています。オカメアジサイは今年で二年目なんですよ。最初は花をつけないので、本当にこの子には苦労させられました。でもちっこい花なので殊更かわいいです。貴女のように!
     

  5. 良枝 より:

    こんばんわ。りんこです。
    沖縄系の番組が多くてついつい、夜更かし。
    おなかのまあるい奥様もまあるい美しさがあることと思いますが、
    それを兼ね備えたまま
    子に対面した奥様はより美しくなられるんでしょうね。
    学問をして、お美しくて、それでいて母になられるんですから、
    本当にお強い。
    私もがんばらなきゃなぁ 笑

  6. 文殊 より:

             りんこさま
     
     気づくのが遅くなって済みません。ねぇそうですよね。女性は凄いです。どんな人でも母親から生まれています。つくづく偉大なものだと思っています。うちの妻は妊娠前と殆ど変化なく、相変わらず学校に行って勉強をしています。好きなんだろうな、勉強することが。だから僕は何も言いません。伸ばしてあげたい一心です。一所懸命にやれば、ただそれだけでいいというのでしょう。全くひたむきなんですよ。若い頃は『赤毛のアン』が大好きでした。僕は彼女からの影響でアンを読むようになったのですよ。確かにアンと妻は全く違いますが、でもアンと同じところはたった一つかも知れません。それは明るく前向きだってことです。それだけで充分ですし、アンでなくてもいいんです。アンの資質が充分ではないかと思っています。だからりんこしゃんも僕たちのように明るく前向きで頑張りましょう。お互い戦友のようなものです!
     

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