Noblesse Oblige (位高ければ為すべきこと多し)

 

お茶請の灰皿とタバコ

 

 

 

 

               Noblesse Oblige (位高ければ為すべきこと多し)

 

 

 

 妻と付き合い始めて間もない頃、「ウチ、タバコ吸う人好きやないねん、タバコ、やめてください」と言われた。それからどのくらい経っただろうか。いまだにそれを実行しているが、つい先日、妻が東京にいないことを幸いに、昔愛用したパーラメントをポロッと一個買ってしまった。気がまぎれるのではないかと思い、吸いたくて吸いたくて堪らなかったのだ。でも函は開けたものの、吸うべきか吸わざるべきかと考えつつ、数日が経ち、そして今日を迎えている。永年使い古した櫻の絵柄が描いている陶器は、どうやら煎茶椀の受け台らしく、受け口の凹んだ処に一つ穴が空いている。恐らくセットものだっただろうが、この一個だけ店頭の片隅に涼しげにあったので目に付いたまでのことである。無論櫻の絵柄が決め手になったことはいうまでもない。京都・祇園の一角に位置する鴨東、その縄手通りにある骨董商から買い求めたもので、江戸時代の三河内焼(みかわちやき 別名;平戸焼)である威らしい。僕はこれを灰皿として使い、この中はヤニなどで汚れているが、青い釉薬で描かれた櫻の樹の景色が、パーラメントの深いブルーの函に映えて美しく見える時が、偶にある。そんな訳で、妻との禁を破りたくなるぐらい厳しく大きな悩みと葛藤と、交渉とがずっと続いていた。

 昨年十一月から先月まで、少々大袈裟だが、まさしく疾風怒涛(シュトゥルム・ウント・ドランク)のような日々で、僕の病と手術と、過酷な事態に対峙し格闘を余儀なくされておりました。余り仔細には申し上げかねますが、1929年に突如起こった世界恐慌と同様に、この度の世界同時不況と深刻な株安に、当社も影響は無縁ではありませんでした。勿論当該会社は豪州のチタンなど、主に原材料などを中心にして資金投入していたものでしたが、亡き主人が責任を持って行って投機した或る株が偶々裏目に出て紙屑同然になっていました。今時はどこかの国の国債ですら怪しくなるぐらいで、どんな銘柄でも自明の理なのですが、経済用語もまだまだご勉強中のCEOさまに対し、折を見てインベスト部門を閉鎖すべきと主張し果敢に屹立したのです。兄弟は他人の始まりと申しましょうか、少々情けない話ですが、何と櫻の財団が保有する資金の一部を取り崩せないかとご相談を受けショックで居た堪れませんでした。暗黙の裡に深刻な対立と葛藤が御座いました。幸い会社資金の真水の部分には全く影響はなかったのですが、彼は人一倍責任を感じ、兄の遺した責任を果たそうとしたものでしょう、つい「私には、櫻は特別に興味はない、何とかしてくれないだろうか」という言葉がそもそもの発端でしたから。僕は瞬時に激怒し、兄君さまのご遺言でご遺志だったはずなのに、何故そのような短絡的判断なされたのかと憂慮し、別扱いのものになっているものを、今頃になって拘泥されるのかと詰め寄りました。無論表面的にはその怒りは爆発出来ませんでしたが、心中いささか穏やかではありませんでした。そこで僕は一つの重大な決意をしたのです。十二月初め頃のことでした。スイスのパーソナル・バンクに相談し、着々と資金調達の準備を進め、あの厳しい忙しさに中で、一人孤独な作業をしていました。やけくそでしょうか、ブログも人一倍更新していました。そうして暮れも押し迫った頃、準備完了と同時に、CEOさまに正面きって財団の理事長を降りて戴けまいかと申し上げたのです。公益法人である財団とは、資金の運用も一定の厳しい決まりがあります。そう簡単なものではありませぬ。何しろ名義の書き換えだけでも、かくも長く厳しいものとは思ってもいませんでしたから。当然数名の理事名変更も当たり前のことです。そしてそこで、CEOさまと随分議論をし尽くしました。正月早々にあった僕の重篤な手術を挟んで相前後してやりあっていたのです。ここまで来てここで、弟君さまのCEOさまについておこがましい非難めいたことを書くつもりは一切ありません。所詮内部事情のことですから。今は、永遠かと思われた長いトンネルの先に、逆にスッキリと丸く収まったことに深く心から感謝している次第です。

 いつしか僕は、亡き主人の父上さまが言っていたことを思い出していました。人を育てるのに、未完の人間に一切合切の責任を負わせる方法もあるんだよと。

 

CIMG1350 の補正

 

 結果から申し上げますと、僕が僕の固有資産の現金(毎年掛かる巨額の固定資産税などの税金支払い準備金と本宅・白金の家に支払う生前贈与税分と普段の生活資金すべてを足した資金)と、パーソナル・バンクから○数億円の借金をし、その資金をもって理事長を僕と交代して戴く案に落着致しました。最初はCEOさまは受け取りを断固拒絶され、何度も正念場がありましたが、結局僕たちの間には暗黙の信頼関係が基本としてあったのでしょう。一月二十五日の僕の退院の日、時まさしく初天神の日でしたが、デリバリー及び財団の登記簿謄本変更手続きをもってすべての問題の終結を得ました。交換条件にて、CEOさまが兼務していた財団の理事長を降りて戴き、僕は会社の代表取締役も関連会社の役員もすべて放棄致しました。僕は櫻の財団一本に仕事を集約したのです。そんな高額でべらぼうな取引について、当然妻や実家に、僕の計画の全容と、実行前にも、すべての発端や経緯を打ち明けました。驚くことに妻はやけに落ち着いて笑っておりました。貧乏になるんだねと。そうだと言ったら、ふぅ~~っと一息つき、肩の荷が下りたというのです。貧乏同士、無一物から出発出来る歓びがここにあるものと言うものでした。そんな妻に、今回はどんなに感謝したことでしょう。そのお陰でとんでもないお荷物を背負い込みました。ズシリと、今両方の肩の荷が重いです。一つだけよかったことは毎年多額の納税をしたのが、借金することによって税額が少し軽減されたことくらいです。第二子を授かった妻のお腹は少々出て参りました。テーブルの先端に掴まり立ちをし、ヨチヨチ歩きを始めた長女・杏は可愛い真っ盛りです。妻は今月大学院博士課程を卒業し、妻と杏は櫻満開の季節に、東京にやって来ます。一年間どこにも就職や就学をせず、新しい生命の誕生にだけ懸けたいと申しております。でもどっちみち東大の史料編纂所や国立国会図書館に通ったりしてじっとしているような妻ではないでしょう。尚CEOさまとはこれまで以上に、より深い昵懇の間柄となり、会社には一切無縁にはなりましたが、亡き主人が暮らした生家の年中行事については一層深く関わらざるを得なくなったと思います。永く留守をしていた弟君さまに対し、多く伝承して行くべき責務が僕にはあるものだと思っています。櫻についてこの記事では触れませんでしたが、今週月曜日に、今シーズン最後の櫻の補植を終え、関東エリアのみ全7箇所約300本の山櫻の植樹で今期は終わりました。このところあちこちから届く櫻の開花の報を聞くに及んでグングン体調が回復し嬉しい限りです。もう心配は要りません。皆さまから戴いたお励ましにお詫びと心からなる感謝を申し上げます。

 漸く一段落した今、クロッカスの花が咲く頃にはと或る御方と、大切なお約束をしていました。それはこのような紙面で詳細には一切申し上げられないのですが、幾らネット上でのこととは言え、僕の「誠」が掛かっているイノチの次に大事なことがあります。従って一件落着後、日に日に重く圧し掛かっておりますが、それが実際に実行されるようになるのは、前述の事情から半年から一年ぐらい着手されるのが延長されてしまうということです。今回やっとの思いで多額の納税を済ませました。今は丸きりスッカラカンの状態です。膨大な借金の返済(15年ローン)を毎月しながら、その中で幾らかでも工面し預貯金の見込みをどうにかこうにか立て、そうして実行しようとヒシと決意しています。亡き主人が遺していった財団が所有する財源の原資は何人たりとも手を付けさせるつもりはなく、櫻山の買い取りまでは、喩え細々と雖も、安行の苗場と補植とを続けて行く所存です。かの御方とは普段親しくメールで遣り取りを申し上げておりましたが、このところ全く連絡をせず、主人のパソコンも封鎖したままになっております。それは約束から逃げる意図と意志では全くなく、逆に現実的になった証拠と捉えて戴けまいかと切に請い願うもので、現実にお話出来る段階になってから、ご連絡申し上げようとシッカリ心に決めています。だからこそ連絡も申し上げず、僕は只管この現実と真正面から向き合っているところです。それまで待って戴けるのではないかと内心勝手にそうせざるを得なかった苦衷でありますが、どうかお力を落とすことなく、その「時」を待って戴きたいと心から心からお願い申し上げます。

 

新しいベンケイ君

 

  何と何と、僕のベンケイ君からポロリと落ちた一枝をサザレ石が入った何気ない計量器に水をさして入れていたら、頼りげな根っこが生え、しかも花期を三ヶ月もずらして今は盛りに凛として第二のベンケイ君が咲いています。まるで花橘のようなキリッとした美しさです。凄いでしょう!この俗称「金のなる木」は酷く折れやすいのですが、こうして忽ち根付くのも特徴で、生命力が物凄く強いのでしょう。僕たち家族にまた新しい命が誕生します。娘の誕生は別に、散々だった去年とキッパリおさらばして、新しく元気を出して行けと神仏から言われているように思われてなりませぬ。巻頭に掲げた御題のことですが、先日から土曜日に放映されていた大好きな「NHKドラマスペシャル 白洲次郎」のお話で、次郎さんが最もよく言うセリフの一つです。フランス語で、直訳すれば「ノブレス・オブリージュ=貴族の義務」と申しますが、僕は次郎さんと同じ使い方で、「意=位」或いは「志」が高ければ為すべきこと多しと訳して平気で使っています。英語ではノーブル・オブリゲーションと言いますが、僕が大好きなアメリカの作家/ウィリアム・フォークナーの小説にも頻繁にこの言葉が出てまいります。又次郎さんはPrincipal(プリンシパル=原理・原則主義)と常に言い続け、この言葉も多用致しました。伊勢谷友介クンが熱演する白洲次郎(中谷美紀サンが正子役で適役ですね)が楽しみでなりません。第三話までのお話はまだ第二話で放映され途中で終わっています。製作者側の脚本と、桂子さま(かつらこ=次郎・正子の娘さまで現在の武相荘の運営をなさっておいでです)が、現実であったことと、ドラマとして創造されたものとのズレを指摘されてお互いに相克なさっておいでなのでしょうか、第三話だけは今年の8月まで順延されるようです。吉田茂との爽快な二人三脚を妬み、口性がない無礼な連中は、次郎さんをあのロシアの怪僧ラスプーチンではないかなどと盛んに揶揄したようで、次郎さんは政界によっぽどウンザリ来ていたのでしょう。通産省を官僚横断的に強引に立ち上げ、サッサと下野してしまうのです。兎に角何事につけカックいい御仁で、今どき最も求められるタイプの男性像ではないでしょうか。明治以来自己確立を追及して来た幾多の文化人の中で、どうしても飛び抜けています。次郎さんのダンディズムは武士道に似て凛として、やっぱり次郎さんは本物だと信じて疑っておりません。白洲家は徹底したいい意味での個人主義に貫かれていて、次郎さんと正子さんの距離感が実によく心地よく表現されています。楽しみは先に延ばしておきましょう!何事も。 (尚今までの主人のPCは封印してあります。僕はJcomに加盟しておりません、連絡先は nofuuzou30@hotmail.com だけです)

 

 

 

    今日のBGMは 小田和正の『たしかなこと』

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