葉櫻のなかに逝きつ戻りつ

 

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  パリ・オルセー美術館の紙ナフキン 絵が四面あって 紙ナフキン一枚全部に刻印されている

 

 

 

          葉櫻の中に逝きつ戻りつ

 

 自己の資産を一旦空っぽにしてみると、何とも爽やかな葉櫻の中に立っているようで、此の頃何とも嬉しい。そんなスッカンピンな僕を心から信じてくれる妻の顔が一層瑞々しく輝いて見える。再びお腹が出て来た今日この頃、多分しんどいのだろうけれど、微塵にもそれらしいようには見せていない。朝晩などはなるべく杏に母乳を与え続けている。それを僕は横目でチラチラと見る。勉強に出る時は、僕の実家まで行って、杏を東京のじ~じ(僕の父)とば~ば(父の妹)に預けてから行く。ナルちゃん憲法のようなものを叔母に手渡してあり、叔母も父もベビー・シッターには絶対に反対である。杏は、ママンと離れる瞬間をむずがったりしないようになっていて、それがあの老兄妹を格別に元気にさせている要因の一つのようである。僕は、以前より遥かに時間が取れ、専門分野のみならず、益々色んな分野の読書が増しているようで嬉しい限りだ。失うものがあって、初めて得るものがある。こんな僕を好きになってくれた妻に、昨晩どうして?と問い質してみた。そしたらあなたは何事にもひた向きだからと。あなたと話していると、ウチの位置が分かって嬉しいからと含み笑い、分かったようでよう分からんが、目的や目標をきちんと持っている妻だからだろう。漸く夫婦らしい会話になった日々。

 

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 でも多くの女性はお年をめしてくると、驚くほどの名エッセイが書けるようで素敵なことだと思う。最近読んだ本に、志村ふくみさんの『白夜に紡ぐ』という本がある。以前から志村さんはドストエフスキーの愛読者であったことは知っていたが、ここまで深く読み込まれているとは実に驚きである。シュタイナーも好きらしく、あの名文についほろりとしてしまった。それら二本の「心の柱」が縦糸で、ふくみさんの豊かな感性が横糸になって、あんなに素敵な和服が仕上がるのだろう。草木染の、あの繊細な色彩の美しさの背景に、ご自身の人生の痛みと、このような心の格闘を強かになされた読書の履歴があったからだろうな。志村ふくみさんの全人格が飄然と出ていてしっかりと書かれてあった。久しぶりに読みごたえがある本であった。今はとても買えないが、きっと妻にふくみさんの着物を買ってあげようと益々意を強くした次第である。それから脳科学者・茂木健一郎さんが書かれた『「赤毛のアン」に学ぶ幸福になる方法』である。科学者としての目線と男性としての目線、目から鱗もので、しまったぁ先にやられたと思わず絶句してしまったほどであり、アン・ファンの僕を唸らせた。赤毛のアンは著者畢生のライフワーク『クオリア』の研究に大きく貢献しているのかも知れないし、実に快活で明快な本で、丸裸にされたアン・シャーリーも堪らないのではあるまいか。所々クスクスッ!フム納得!の連続で、とにかくしてやられた感じ。それとアラスカにある亡き主人所有の山荘に訪れてくれた星野道夫さんの本も、片っ端から再読している。でっかい蚊がワンワンと飛ぶユーコン川支流の川で出逢った時、あの星野さんの弾けそうな笑顔が爽快で素敵だった。忘れ得ぬ大切な思い出である。その直ぐ後に、彼は例の忌まわしい事故に遭遇された。カムチャッカ半島の大地でヒ熊にやられ、天然自然の虚空の中に還って行ったというべきか。本望であったのだろうか。言い忘れているものはないのか、星野さんの本を繰り返し広げそれを懸命になって探している。

 

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 僕のオフィスの面々を今年いっぱいは殆ど勉強に行かせている。気象大学校へ樹木医への受験勉強やら、某大学大学院の林業学専攻へ某女子大の櫻研究班の大学院へ、全国の林業調査などもさせている。櫻をキーワードに広くより深く、全職員を自分の好きな分野の選択によって、必ず勉強をする癖を作らせている。僕のも皆の分も全員に毎月お給料を支払い、その上それぞれに掛かる費用分を負担していても、財団の資金原資を使わないで済んでいる。さすがにスイスのパーソナル・バンクは違う。僕は僕なりに、一日一度はオフィスに出て、会議の日程を組んだり報告を聞いたり指示を出したりしている。以前より遥かに時間が出来て、嬉しくて堪らない。僕の専門分野は今のところ、「日本人の精神形成上での信仰」として、原始宗教から神道・佛教(国家から個人信仰へ 蜜教から阿弥陀さま系佛教に、或いは禅宗)・キリスト教・イスラム教、或いは武士道や儒教の教育までも、更に基本になる民俗学上での一般習俗での信心など、そんな精神世界の部分を専門として選んだ。お陰で妻の手助けが是非必要で、大変助かっている。

 

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 櫻山建設計画の場所はここに来てやっと決まったが、尚資金のデリバリーまではたっぷりと時間がある。先日行った櫻の公園は元ゴルフ場だったところに建設するとしたら、大きなヒントになる場所であったが、僕たちは山間部で計画している。これ見よがしには決して創りたくない。蔵王権現さまのご信仰のお陰で、あれだけの櫻の山になった吉野、愛媛県の伯方島の開山公園(千本)や、普段無人島だが、櫻の時季だけ人が集まる能嶋(あの村上水軍の本拠地)や、岩城島(五千本)などはお祝いの時だけ植えて行った一連のしまなみ海道の櫻も、ある意味では信仰の櫻のお山ではなかろうか。デラシネ(根無し草)の櫻ではなく、現地の方々の根本信仰に関わって櫻を植えたいと切望している。静内の二十間道路の蝦夷山櫻の、日本一のあの櫻街道だって、御料地に通じる道路であったことに対し信仰まで行かなくても、ある種のご威光からではなかったか。現在櫻に関する財団は二団体存在している。一つは財団法人日本さくらの会で、競馬などの売上利益金から僅か数パーセントを公益法人として出資してもらい、それで運営されている。従って現在の衆議院議長が必ずこの法人の理事長を兼務する。但しこの会の櫻の植樹は殆どが染井吉野でしかなく、どうしても納得がいかない。もう一つは財団法人日本花の会で、この母体は建設機材であるユンボなどを製作販売をしている㈱コマツ製作所主体の民間会社運営の財団で、茨城県結城市に広大な苗場を持って頑張っておられるが、幾ら企業メセナと言っても今日の不況下ではさぞや大変だろうと想像する。まだ世間的には名乗りをあげていない僕たちの財団は完全無欠な個人出資の財団で、亡き主人が膨大な資金を蓄積して対応を終えてからこの世を去った。僕は今回個人の私財を一切犠牲にして、財団の公的なすべてを譲渡され運営にあたっているが、僕が関われる僕の人生の時間はそう大してないのが実状(最大で後四十年ぐらいかなぁ)で、僕が生きている間、残された時間との闘いになるだろう。でも完成することがなくてもいいのではないか、何処か独裁国家のように世襲制にする気はさらさらない。後に続く熱意のある二世代三世代に掛けて、或いはずっと掛けて次第に出来て行けばいいことであろう。今の僕は徹底して理念づくりと基本づくりなどの骨格づくりに専念すべきであろう。新しい国家像構築へ理論形成の一面があるだろうが、思うに少々飛躍するようだが、多分「母念」という言葉に通じ、多くは故坂村眞民先生の思想・信条に呼応していると思い起される。母念と言えば、青森で『森のイスキア』を主宰し運営なされていらっしゃる佐藤初女婆ちゃんの「イノチ」にも通じているのかも知れない。いつもお元気な佐藤婆ちゃんの詩に次のような詩がある。

         

       「いのちを頂く」

                      佐藤初女 記す

     今朝もふっくらとおいしそうに炊きあがった

     ご飯が輝いている

     一粒一粒が呼吸している

          毎日はおろか何十年も食べているのに飽きもせず

     食べるたびに新鮮な気持ちで味わえる幸せをかみしめ

     今日も感謝で生きる

 

 初女お婆ちゃんのお結びもで心を籠めて結ぶ。だから人に伝わる。辰巳芳子さんのスープだって、手間隙をかけ手しおに掛けて作る。手仕事の暖かさが相手にちゃんと伝わる。お医者さんが手アテをしてから聴診器で心音などを聞くことだって、をかけるからから伝わってやがて平癒につながる。に関することは手順と言って、手=心(準備あるいは順序=整理)のことだ。僕たちの仕事は単なる櫻の植樹ではない。一本一本櫻という神さまをお手植えするのである。千年先の日本へ手渡しすることだろうと思う。櫻を通して日本人の原点をしっかりと見つめ、人としてのプライドの復刻と自信の回復、そして本当の天然自然への回帰と言う壮大な、でも今やらなければならないことだと強く信じる。生きる歓びをともに分かちあい心から感謝しつつ、枝は幾ら揺れてもいい、幹さえしっかりしていればと改めて心から念じる。

 

志村ふくみさんの『白夜に紡ぐ』 是非お薦め!

 

茂木さんと星野さんの文庫本

                   してやられてしまった茂木先生の『アン』      星野道夫さんのは全集だけではなく文庫本もあり

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