山の調(しらめ)は櫻人(さくらんど)

 

奥千本・修験古道にある苔清水  西行も飲んだ苔清水の脇に 西行の歌「とくとく」を踏んだ芭蕉の句碑がたっていた

 

 

 

           山の調(しらめ)は櫻人(さくらんど)

            其の五  病院とルーティーンと型と そして短き旅の終わりに

 

 

       Hospital&myDoc

        藍染のバッグと黒いステッキ  (藍染のエコバッグと、手前が大切な黒い愛用の僕のステッキ)

  東京に帰ると、景色はまるきり一変していた。僕はまだ春の余韻を引きずっていたのに、足利出の藤の花の古木が丸の内界隈に飾られようとスタンバっていた(東京 丸の内フラワーウィークス 2009)。オフィス街や皇居周辺の皐月は花盛りである。日曜なのに、僕の担当の医師が病院にいて、症状を話すと直ぐ来いと言われる。伏見稲荷神幸祭の日、京の都を後ろ髪を引かれつつ急遽帰った後直ぐにひと先ずオフィスに出て書類などをひと通りチェックしてから、病院に向かった。僕の脚を見るなり、先生から大目玉!吉野は反対したはずだよと。脚首が蒼く内出血し黒ずみ、膝から下はバンバンと腫れ上がっていたからだ。レントゲン写真を撮り、血液検査し、注射で血抜きをし、痛め止めのブロック注射をし、点滴をし、しばらくすると院内の検査室で調べた血液検査の結果が分かった。CK(CPK)の数値が何と657。驚いたのは寧ろ先生の方で、この正常値は57~197が正常で、普段今まで平常時の僕の数値は範囲内であったから驚かれた。単位U/L、コメントは&Lでこの数値である。診断の結果、骨には全く異常はなく、両脚とも筋肉に著しい炎症が見えると言う。かなり酷かったようだ。適切な処置方法は絶対安静にし動き回らないことだと。しばらく安静にして10日~2週間経った後、血液の再検査をしてこの数値が多少なりとダウンしてなかった場合、重篤な場面があるかもと。この数値がグングン上がるようであれば、全身性線維筋痛、原発性線維筋痛症候群などなど、重篤な筋肉の病気になるとか、様々な難しい説明と、そして厳重注意を受けたが、今回の診察は所謂筋肉が正常か異常かの判断であったわけである。先生に脅かしているのかと聞いた。一笑に付され冗談を言っている場合ではないと逆にきつく叱られた。勿論歯茎に日に一度貼る『治験』の投薬も続いているわけで、ロキソニンを飲んで、湿布剤もロキソニン湿布剤、自宅で絶対安静が欠かせない、それが出来ないなら、しばらく入院すべきだと。僕は病院で4時間ほど過ごし、兎に角様子を見ようということで、自宅に戻った。一連のことを正直に妻に話すと、あの朝反対したのは先生と同じ気持ちだったからだと、そして諭された。あなたは櫻に全部気持ちが持って行かれちゃうんだもの、どうしようもないえ、櫻に嫉妬しちゃうかもと。

 

      Routine& A custom

       吉野商店街 かき餅  154  (懇意にしている吉野のお米屋さん 店頭にあった吊るしカキ餅)

 こうして帰宅してからずっと大人しくして安静にしている。本を読む、椅子にドッカと座って料理を作る、杏と遊ぶ、ミルクをあげる、妻が時々かける音楽を杏と一緒になって聞く、杏と一緒にお昼寝をする、杏とお風呂に入る、時折ブログを更新する・・・・。お酒を一滴も飲まず、脚を使うのだけはどうにか避けた。妻は勉強があったり、自身の身体の気遣いや新生児定期健診に行ったり、洗濯をしたり、彼女も結構やることが多い。だが待てよ、何かが違う。僕と妻は根本から何かが違っているように思われてならない。多分そこが好きになった理由であろう。僕が思うに、恐らく妻はしっかりとルーティーン(routine;日常の決まりきった仕事、慣例、日課の意)を持っていると思える。子供が生まれてから多少その習慣は以前と違ったものの、自分の目標をちゃんと持っているので、悪阻が酷かった時でも殆どそれを崩すことはなかった。京都と東京に離れ離れになっている時でも、彼女は今どうしているか、全く案ずることはない。僕たち二人とも携帯電話を持っていないし、だから逆にいつどこでどうしているのか、お互いに充分知っているように思う。杏が目の前でちょろちょろしていても、読書する時はきちっとそうしているし、朝起きてから眠りにつくまで、或る程度決まった手順によって一日がちゃんと管理されて推移して行く。夜寝る時だって、何分かは決まって本を読む癖があり、それは幼児の時からそうだったと実家では証言している。突発的なこと突然のことが多いことは決してよくないようだ。そうでないと、博士論文を済ませていても更に上を目指そうとはならないからで、自分できちっとした決め事があるようである。傍目から見れば何だか詰まらなそうな日常だろうけれど、実績の積み上げやキャリア・アップには、それが極めて必須のことなのだろう。僕の場合、完全に逆で、極端に遅かったり急いだり何かと忙しく激しい動きが普通だった。一般社会人は人に使われているのだから、何事も全部自分のペースでは行かないだろう。二人で暮らし始めて、漸く妻の日々の動きが見えて来た。僕は、そんなルーティーンを持つ人間であるべきだと、今回の旅で悟った。

 

       A model &Honesty

      よ~じ屋の油取り紙  (祇園 よ~じ屋さんの油取り紙 金箔の裏紙に使用された紙で出来ている)

 ルーティーンと言うと、野球のWBCに出て大活躍、しかも現場復帰直後に針本勲が持っていた日本プロ野球の安打記録をアッサリと塗り替えたマリナーズのイチローを思い出す。バッターボックスに入る時も1塁に出た時も必ずやる同じ行動パターンが存在する。そしてそれが面白いことに何も野球に限ったことではないようだ。ゴルフの場合プリショット・ルーティーンと言い、タイガー・ウッズやジャック・ニクラウスだってパーマーだって、打つ瞬間、つまりトップの位置で如何にいいショットに出来るか(イメージ=プリショット・ルーティーン)をしっかりイメージ出来ていないと全く何の意味もなさないと言う。バレーやダンスも同じことが言えるようで、シンクロナイズド・スィミングのペア競技やその団体競技は言うまでもない。ルーティンがしっかりしていないと直ぐバラバラになってしまうだけのことである。で、ここでお話したいのは個人のルーティーンのことで、このルーティーンには実に意味深なことが多い。ルーティーンの持たない競技者は一切大成しないとキッパリと聞く。つまり決まった手順や習慣のことを言うのだけれど。例えば、朝起きてからの行動では洗顔、歯磨き、着がえ、朝食、決まった時間の電車に乗るなど、他細かな仕草の拘り、そんなことまでを指して言っている。それって言われてただ漠然とするのではなく、自覚し、自律的にできる行動のことを言っていることと思われる。要するに完全に意識して型をやると言うことだ。僕たち日々生活しているラインは、謂わば「ルーティーンの連続」で、多くの自閉症患者の場合、生活の中でルーティーンを増やしてやることが格別に重要なことらしい。安定した生活を送るためには、それは必要不可欠であり、ルーティーンを増やすことで、日常生活のリズムが確立され、混乱を招くことも殆どなくなると言われている。そこで不適応行動の減少にも繋がって行くことになる。そして、それは正直とか実直さに直接相通じているように思えてならない。

 

       Zeami’s Teaching

      杏のお守り 最も古くから作られてきたものらしい 桔梗の寺紋  (智積院の御守 杏のために 最も古くからこの仕様で作られたもの 桔梗の寺紋)

 室町時代能楽の大成者・世阿弥元清は能の最も根本的な修行の一つに「型から入れ」と教え、更に「型から出よ」と諭した。型とは如何にも息苦しいものに違いないが、何一つ分からない時は決められた型がないと不安で仕方がない。型通り演じ、それがいつしか当たり前のことになって行く。更に重要なことは型を出よと言うのは型を無視してもいいと言うものではなく、型は一生涯付いてまわる。だが永年それをきちんとやり通せば、或いはやり切れれば、型は自ずと身について来るもので、型を出ると言うのは、型をやめてもいいと言う意味ではなしに、自然と意識から外れるようで、無意識のうちに型が自然淘汰されていると言う教えのようである。意識して型をやっているうちはまさに修行の途中で、実直にきちんと修行して行けば無意識のうちに型が身につくと言うことなのだろう。決められたことをちゃんとやる。それがどんなに大事なことだろうか、今回のmy Small Tripで、それを強か教えられたことであった。今度は今までの仕事と完全に違う仕事をして生きて行くわけで、コトが成就するためにも、この際きちんとルーティーンを徹底しようと思い至ったことである。尤も僕たちが付き合った切っ掛けは飛んでもないPassionがあったからに他ならないが。持続する深いAffectionを持ってお互い支え合って実直に生きて行けたらと思う。旅の終わりに。(今回の、僕にしては短く激しく厳しい日程の京都の旅であったが、この記事をもって旅のリポートとして終わります。新緑が一段と眩しくなって来たようですから。まだ花が咲かない静内や根室の方々には甚だ申し訳がたたないが)

 

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