貴女へ

  

 

                                    貴女へ

 

  いつも僕の傍にいてくれて有難うと僕は、妻にそう思う。そこで妻の衣服をチェックしてみる必要があったので断わってから、チェックし序でに夏物へ衣更(ころもがえ)をした。そう言えば、マタニティ関係衣服に夏物がないことに気付く。先日からあれこれデザインを起こし色づけして絵に纏めた。妻にも見せた。妻はただ笑っているだけ、だってどうするのか分からないのだから。そして今日も午前中は父とトレーニング。やっと本番で泳ぐことを許可され、今日からゆっくりとした動作で泳ぎだしたのだが、オフィスには出ず、そのまま表参道に行く。母の時代から眤懇にして戴いている縫製の先生、事前に叔母から連絡を入れて戴いてて、彼女の仕事場に。初夏の様相を呈する中、タクシーを飛ばしお邪魔する。僕の手描きの絵を見せ、こんな風なデザインでどうでしょうかと、恐る恐る妻のマタニティ・ドレスを作って欲しい旨を率直にお願いした。お婆ちゃん先生だが、いつも見事な仕立てをする先生で、おやまぁご結婚なされお子様が生まれるのねと言いながら、笑顔で僕の顔と絵の両方を観ている。しばらく考えて、ハイ分かりました。フレアーになる部分は透けて見えないように三重にしましょう。絵のト書きには身長から、脚の長さや、身丈、着丈、肩幅、現在のウェストなど主に計れるサイズを書いておいた。一番下は白地でストレートでも、中間の生地もフレアーにすると素敵かもね、生地もこれとかこれなんかはどう?薄くて涼しく、でも三重構造だから見えないし大丈夫。勿論ギャザーは緩めにしておくけど、お任せあれ!そうきっぱり仰って戴いてお引き受け下さった。同じ生地でセミ・フォーマルとカジュアルの2着誂えた。胸の片隅に何か刺繍でもしましょう、何がいいかしら。そうねぇ夏だから向日葵かなぁなどと言っている。大きさは小さめの方がお品がいいわよねと言いつつ、鍔広帽子も共布で作っておきましょうと。僕は妻の写真を見せ、細かい部分は全部先生にお任せすると言って失礼した。何と10日間で出来上がって来ると言う。そこに腕利きそうなお手伝いさんが数人いらっしゃて、こんな不景気な時期でも結構忙しそうだ。余程多くの方々から篤い信頼を得ているのだろう。だからきっと貴女に似合う素敵なマタニティ・ドレスが仕上がってくる。それを着て、きっと貴女は颯爽と出掛けるのでしょう。先生に、柄(え)はお任せにして日傘も、一緒に共布で頼んでおいた。薄い麻の生成りの生地で、涼し気で絶対素敵なのだ。何よりも簡潔な織柄が実にいい。日傘にもお帽子にも、マタニティ・ドレスのとおんなじ刺繍をさり気なくしておきましょうねなどと仰っていた。

 今回は妻に、半分だけサプライズにしようと思っている。僕の妻は、掃除洗濯まるで駄目のようなウエキヒトシの歌の文句じゃあるまいし、妻として役割が出来ていないのではない。妻の本分は学問で、現役の学者であり、その方面で日々忙しいのである。僕と、僕の京都のオフィスで出逢って以来、数年間お付き合いし、愛し合って結婚した。年齢差はあっても両家円満にして納得づくものである。時に僕が年の差を口にすると、妻は、「ウチ、千年前の人とだけ毎日話しぃひんのどすえ」と言い、ただ笑うだけであり、実際生活してみると、年の差は全く気にならない。って言うか、案外女性に甘える場面は多く男性にあるのかも知れない。家事や何もかもやり慣れていないことは先刻から知っている。僕は家事が好きだし、僕が頑張る分(実は頑張っていない 僕は無意識のうちに何にでも反応し動き出す)、僕の子を生み、その子を育て、そして毎日僕と話したり、話題だけはお互い豊富で、要はお互いに助け合えばいいことで、自然楽しい日々になって、慎ましい日々を過ごしている。無論現在は妊娠中で、あれこれ就職のツテは決まっているのだが、今は子作りと子育てだとキッパリ割り切っている。僕は、それで充分満ち足りていて我ながら幸せな男だと自負している。自慢するわけではないが、どちらかと言うと妻は美人のほうだと思う。結婚披露宴の時出席した口性がない旧友から言わせると、ボッテチェリの「ヴィーナス誕生」にそっくりだとぬかす。「オイオイ変な妄想はしないでよ」と言ったら、「いやいや失礼、お顔が小顔で知的でそっくりだと思ったんだよ」と。確かに顔つきは似ていなくもない。9頭身ぐらいはありそうで、指も細長く、僕は気に入っている。京都の伝統を、子供時分から何気なく身につけてきたせいか、何事も至極理に適っていることしか言わない。情緒も安定している。そうでないと学問は出来ないらしい。だから喧嘩になる要素は殆どありそうにない。妻はかなり勝気な性分だが、でもこれからも僕と変に争うことはなさそうである。長女はヨチヨチ歩きをし始めたばかりだ。何でも口に入れ、それで物事を確かめるようで、時々ドキッとすることがある。そして、夏の終わりに生まれ来る第二子はオトコかオンナか、どっちでもいいことだ。ただただ健康な子で生まれて欲しいという願いだけで、今から心待ちにしている。  (以前妻は、僕のBlogを丁寧に読んだが、今は、僕が書き慣れたいだけのことだと思って、全く読まなくなっている。ホッ)

 壮大なイノチの営みの中で、静かにずっと愛して生きてゆくことだろう。

 

  (写真の一部、落合恵子さんの子供向け書店・「クレヨン・ハウス」にて ヒヤヒヤしながら撮影す 済みません!左、妻の写真は現状のではありません)

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