こうのとりのゆりかご NHK新番組「アレ 今どうなった」より

 

 

 

  主人の旅先での走り描き  銘に「初夏を行く」

 

 

 

                               こうのとりのゆりかご

                                NHK新番組「アレ 今どうなった」より

 

 普段は日中の家のことや勉強のことで、夜になるとクタクタになるらしく、殆ど杏が休むのと一緒に眠ってしまう妻である。その夜も早く寝てしまったが、途中目が醒めて、僕の部屋に入って来た。偶々放送されていたNHK深夜番組「アレ 今どうなった」を一緒に観ることになった。話題は2年前に創設された、所謂「赤ちゃんポスト」のことである。人事には思えない僕たちは番組を注意深く観ることにした。

 熊本県熊本市にある医院療法人聖粒会 慈恵病院の理事長先生・蓮田太二氏が始めた日本初の試みであった。当初その「赤ちゃんポスト」について賛否両論が激しかったと記憶している。それからまる2年経った現在、男児26名、女児16名預かったと言う。そのうち11件、親族などから接触を受け、4人が引き取られて行ったと報告されていた。病院では当初育てられない赤ちゃんのイノチを助けるために創設されたものだった。残念だが、家庭内暴力や直接我が子に手を掛け死に至らしめる事件は今も後を絶たない。痛々しいことに、臍の緒がついたまま公衆トイレに捨てられていたニュースもあった。でもそこは匿名で赤ちゃんポストに入れるから、困った女性はどうしようもなくて、その処理のために、止むを得ず預けて行くのだろうが、その実態をよくよく観ると、何とも曰く言い難いものがあったのだ。

 主に出演されていた看護部長の田尻由貴子婦長は証言する。病院に向かって、ビルの右側面に、その赤ちゃんポストがあり、それは縦50センチ、横60センチの鋼鉄製の扉であり、その直ぐ傍には常時36度Cに保たれた暖かいベッドが置いてあるが、その部屋の中は撮影厳禁となっていて詳細は分からない。そして24時間体制でナースステーションに助産師とナースが必ず最低3人はいるそうである。部屋に赤ちゃんが入ると、ナースステーションのベルがけたたましく鳴り、即戦対応にあたるという。先ず事件性がないかどうかを調べるために警察に連絡し、検証後直ちに医療処置が施される。その後児童相談所を通じて、乳児院にひと先ず預けられる。それから18歳まで児童養護院に移され、専門家によって丁寧に育てられていくようだ。それと裁判を経て里子に出される例もあり、その際里子の子はそのお宅の実子となってしまうので、幸か不幸か分からないが、実の母親は一切の権利を失ってしまう。中にはほっとする人もいるが、ずっと苦悩する母親もいるようである。又或る夜に赤ちゃんポストを探している風で、夜中病院の正面入り口を行ったり来たりする女性がおり、婦長は病院内に優しく導き入れ、乳房にすがる子を観ながら胸が詰まってしまった。そして婦長は何も聞かず「辛かったねぇ」とひと声掛けてあげ、休養室と食事を出したら、それまで何も喋らなかった女性がワンワン泣き出し、ポツポツと住所や名前などを話し始めたと言う。そうして翌朝一人で育てるからと決心を固め、赤ちゃんを抱いて去って行った事例もあると言う。更に24時間体制で、電話相談を受け付けているようで、或る時掛かって来たのは東京方面の女性からで、聞くと既に陣痛を起しているようだったのだ。そこで婦長はその電話を繋いだまま、別な電話で都心においてそれら事例のヴォランティアをやっているご夫婦に連絡し、その女性と待ち合わせする約束を取り付け、それで何とかその女性と逢えて、直ちに一緒に産婦人科がある病院に駆けつけ、翌朝無事に出産出来た模様だった。驚くことに、収容した人数の凡そ3倍の電話相談があると証言する。でも今では非難めいたことは一切聞こえなくなり、寧ろ全国にこうした支援の輪を広げて行きたいと話されていた。

 こうした例に似通った事情がありそうで、殆どが女性一人で悩み続けていること、或いは相談する仕方やそういう場所を知らないで悶々と苦悩していること、周囲の目線が冷たくヒューマン・リレーションに甚だ欠けていること、父親の無責任さのこと、それらのことが共通して挙げられるようである。中学時代に家出をし、何の知識もなく彷徨い、オトコに身を委ね、孤独なうちに妊娠してしまう20歳未満の女性のケースが如何に多いことや、妊娠を知るや、女性が持っていたお金全部を掻っ攫って逃げて行くオトコもいるそうだ。何たる所業であろうか。そして何たる侮蔑であろうか。二人で観ていて、涙が出て仕方が無かった。僕たちだけが幸せであってはならないと。この問題は根が深く幅も相当にあるようで、では何から手をつけていいのか、実際となると少々戸惑ってしまうだろう。でもだからと言って無関心が最もいけないような気がする。先ず自分の周囲から注視して行くべきだろう。

 政治の問題もあるだろう。社会的仕組みが決して万全とは言えない。カナダやキューバやフランスやイギリスのように医療費が殆どが無料と言う国家制度にはなっていないからだ。日本の何処が福祉大国であろうか。あの領袖のアメリカでさえ、国民皆保険制ではないから驚く。マイケル・ムーア監督のドキュメンタリーで映画「シッコ」と言うのがあるが、興味のある方は是非ご一覧をお願いしたい。世界のリーダーと称している一方、厭きれるばかり医療制度がその映画で声高に報告されている。あの9,11事件で救済に当たった救命士でさえ、満足な医療を受けていないというから驚くことだ。最下層の方々にも、生きる権利と恩恵を与えるのは国家の使命であり責任であるに違いないし、日本では医師不足も深刻な社会問題となっている。捨てられた離島の医療も深刻な課題であろう。でもそれだけではなさそうである。大人の男女がどうしようが何になろうが、出来てしまった赤ちゃんは、あなた方と全く別個な人格があるのではなかろうか。イノチの尊さを当然の教育として学校教育にも多くの課題はあるだろう。特に人間にだけ限ったことではない。それからこうしてネット社会になり、隣接する世帯同士のお付き合いも少なくなった昨今である。当家ビルでは毎週一回コミュニティー・ホールで、何らかの催事がある。でもそれですら聊か少ないと痛感しているし、家主の僕自身の出席もなかなか思うように行っていないのが現状であり、自治会の皆さまに殆ど委ねっ放しが実情で、資金だけは援助する程度しかなっていない。ブザマなものである。

 更に最も重い課題は女性自身のことではなかろうか。ロマン・ポランスキー監督映画「戦場のピアニスト」を撮ったのはご承知のことと思う。あの監督が若き日のカトリーヌ・ドゥヌーヴを主演にし撮った初期の映画「反撥」はあまり知られていないだろう。最近そのモノクロの映画をシネフィル・イマジカで観たばかりだったので、是非お話申し上げたい。同監督独特のワンショットが長い長廻しの場面で構成され、サイコ・スリラー仕立てになっていたが、性に関し嫌悪感と好奇心が複雑に交錯するウラ若き女性をカトリーヌが熱演していた。あの映画にあった通り、女性は男性の数倍も、本来は孤独な部分を抱えているのではなかろうか。無論生理的な部分もあるが、ひと皮ひと皮自分の孤独性を乗り越え、漸くやっと一人前の女性になるのではないだろうか。一人前の女性になる前に、願わぬカタチで妊娠をしてしまう例がその殆どにあるように思われてならなかった。無論オトコにも半分以上責任がある。性を快楽としてのみ考えるオトコどもは最低である。簡単に流産などと言うべきではない。医師は棒のようなモノで子宮に出来た赤ちゃんの固形体を粉々に崩して堕胎させるである。それって殺人と何ら変わりないことではあるまいか。余程の医学的事情がない限り許されることではないだろう。経済的理由も、あってはならないことであるだろう。僕たちはカトリック教徒でなくても胸がジンジンと痛んで来る。その夜、朝が来るまで、僕たちは写経をした。僕たちオトコどもはウラ若き女性たちを、もっともっと優しく包み接し、それら女性特有の課題を、女性自身が乗り越えて行く何らかの手助けをしてあげようではありませんか。逆にそっとして暖かく見守ってあげるとか。「こうのとりのゆりかご」の心の輪があらゆる場面で成熟して行くことを祈って!そして新しく生まれ来るこれからの多くの子供たちの健康を願って!僕たちも、それらのことについて無責任に無関心になることを、自分たち自身を強く諌めたかったことである。

 

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