沖縄慰霊の日にささく

 土田麦僊:白百合の写生 (1935)

 

土田麦僊の白百合図 (スケッチ) 

 

 

 

        沖縄慰霊の日にささく

 

 

  今年で戦後64年目にあたり、今日が沖縄では、「慰霊の日」となっている。日本軍の総司令官である牛島満中将が自決し、組織的戦闘が壊滅し、沖縄での実質的戦闘が終わった。その日をもって沖縄県では戦闘終結の記念日と定め、亡くなった累々たる県民の御霊を慰霊するための記念日となっている。沖縄では学校を中心にお休みとなり、毎年この日、最後の激戦地となった糸満市摩文仁丘にある平和祈念公園では、沖縄全戦没者慰霊祭が行なわれ亡くなった一人一人の名が記された平和の礎(いしじ)がある「戦没者慰霊の日」で、戦没者に対する慰霊と平和を願う祈りの行事が行われている。

 唯一日本国での地上戦で、たった3ヶ月間で、日本軍・沖縄の民間人・更に合わせて米軍の犠牲者が20万人も出ているが、何と言っても最も痛ましいことは沖縄の民間人の犠牲者である。3月27日、米軍が上陸をした那覇から35キロ離れた渡嘉敷島では、翌28日に島の北側の谷に700人ほど土砂降りの中を軍を頼りに山中を歩き、やっと辿り着いた場所で、集団自決が行われた。28日午後3時村長が「天皇陛下バンザァ~イ」と叫ぶと、一斉に日本軍から手渡された手榴弾を点火し自爆したのだった。ところが手榴弾の殆どが着火せず、仕方なく親兄弟を、鉈や包丁や、或いは木の小枝などを使って、殺しあわなければならなかった。陵辱されるなら死を選んだのだった。その背景には、日本軍から徹底して教えられた軍規の「戦陣訓」があり、「生きて虜囚の辱を受けず、死して罪禍の汚名を残すことなかれ」。鬼畜米軍は民間人に何をするか分からないからと徹底した強い喧伝の結果であった。従って、自決命令とも受け取れた人々は、そうして親兄弟を殺すしかなかったのだ。土砂降りの中を行軍した住民700余人、生きて捕虜になったのは実にその半分以下の者であった。そこは今でも集団自決の玉砕の場となっており、島では3月28日に慰霊祭が行われている。無論多くの場所で、集団自決が行われた。但し渡嘉敷島の例は恐らく最大規模ではなかろうか。捕虜として救われて見ると、何と医療から食料も与えられ、我が手で殺した身内にどんなに切なく思ったことだろうか。

 本土防衛の最後の拠点として沖縄があった。そんな沖縄に、観光のみで出掛けるのは如何なものだろう。今でも親兄弟を手に掛け死なせた方々が生きておいでである。戦後言うに言われぬ辛酸を舐め、子孫にさえその時の窮状を口にすることが憚られた。何と言う悲劇であろうか。太平洋戦争に突入したのは、現在の北朝鮮のような状況で、経済的封鎖を受けていた。従って大多数の国会議員が戦争に賛成し突入したのだが、勝利したのは僅かに半年のみで、その後は敗走につぐ敗走であった。その後も厳しい報道規制の中、国民は一切実情を知らされることはなかった。沖縄での戦闘は言わば最後の決戦であり、そして広島・長崎への原爆投下に続いて行く。特に昭和に入ってからの軍部はまさしく独裁軍部であり、敗戦をいち早く認めれば、そこまでの犠牲はなかったものを誰一人として反戦を口にすることが出来なかった。文壇の大御所・志賀直哉は戦時中軍部にひれ伏し、戦後民主主義になった途端に、民主主義を口にした。高村光太郎も戦争を賛美した。戦後の光太郎は岩手山中に独り入り独居し出て来ることはなかった。わざわざパリから呼び寄せられ、戦争絵画を描かされた藤田嗣治は、戦後、戦争参画者として誹謗中傷され、再びパリに逃げ帰るようにして去り、その後全く日本に帰ることはなかった。殆どの文化人が戦争に加担したのだが、我が太宰治だけではなかったろうか、一切戦争には協力せず、戦時中独り「御伽噺」だけを書いていた。

  話は違うが、最晩年の星野道夫は沖縄を訪れている。アラスカの対極軸として相当気に入ったようである。僕もこの20年来沖縄病に掛かりっ放しである。御嶽信仰研究で飽きることがない。方々素敵な場所でいっぱいで、フーテンの寅さんだって、最期リリーと過ごしていたじゃないか。

 

 

御嶽(ウタキ)信仰の聖地

 

 ① 沖縄には沖縄独特の信仰形態があった。御嶽(ウタキ)信仰と呼ばれるもので、言わば日本の神道の前身に近いもので、アミニズムと呼んでもよかろうか。神道成立に欠かせない形式で重要なご神事である。最も大切なのは九高島の御嶽信仰で、遥拝の原形があり、巫女はノロと呼ばれ、一種の呪術的奉仕者で、戦前徹底的に弾圧に遭い、沖縄独特の信仰は滅んだかのように思われる。海人は男、神事は女と言われ、殆どの神事は女性が司り、巫女(ノロ)は神懸りもしたようである。その最高峰の御祭である「イザイホー」の御祭は、琉球王朝の信仰である「おなり信仰」の一つでもあり、近年その存続が危ぶまれているが、国家神道として一億総玉砕を掲げる軍部としては、あの伊勢の神宮だけを認め、そうして洗脳せざるを得なかったのだろう。だがこうした一元性は必ず危ういものになるのである。僕は、神道も信じているが、神事と人事を一つにする愚かさは甚だしく情けないのひと言である。宗教を我がモノとするのは、自然を我がモノとし、自在にするという人間の傲慢さに他ならない。明治政府がとった廃仏棄却の制度と言い、あのバーミアン遺跡を爆破したタリヴァンを決して笑えない愚行であったし、軍部が独走して起した盧溝橋事件や真珠湾攻撃など、今の追い詰められている北朝鮮のようなもので、過去の清算が本当に出来ているのだろうか。ご遺骨の収集すら中途半端なままである。琉球王朝を含め、民間の習慣・習俗まで根こそぎ滅びの道へと追いやったのは一体誰だったのだろうか。

 ② 更に多くの米軍基地を抱え、日々痛恨の極み未だ消えぬ沖縄の人々の苦痛を、僕たちはもっと真摯に考えなければならないだろう。戦後もずっと沖縄県民は苦労をさせられた。レイプ事件や交通事故など、日常茶飯事にあった米軍の愚行を押しとどめることが出来なかったが、つい最近日米地位協定が見直されている。でも全く不十分で慙愧に耐えないものがある。日米不平等条約であった嘉永7年締結の、あの「日米和親条約」の根本は未だに生きているのではないかと思われて仕方が無い。日本はまだアメリカの占領地であるかのようだ。何もかもアメリカ追随の時代はそろそろ脱却して良さそうなものである。アメリカから輸入された自衛隊の戦闘機は一機たりとも、対地爆撃装置が付いていないものばかりである。憲法第九条は護持するものの、我が国は我が国で主権を守るべきで、非核三原則とともに一考を要する時期ではなかろうか。日本は未だに独立国ではない。沖縄を見れば見るほど、そのことを禁じえないのである。アメリカの経済は極端に疲弊し、あのアメリカで国民皆保険制度ではないと言う。そういう国家にすべてを委ねて果たして、この先大丈夫なのだろうか。一国依存ではなく、先ずアジアの国々と手を携え、そしてユーロとの連携も深めて行くべきいいチャンスの時ではなかろうか。

 ③ 終戦間近になって参加し北海道を我が領土と主張したロシアの姑息さは呆れてならない。北方四島の返還は当然のことであるが、日本人はあまりにも国境の意識に遠い。フランスとドイツ国境にあるアルザス地方は史上どれだけ翻弄されて来たのだろう。大英帝国とアイルランドの紛争は日本における平安時代から続いた重要な課題であった。近年ベルファストでは又ぞろきな臭い匂いがしないでもない。どの国にもそれが必ずあり、長い鎖国制度を採って来た日本には国境の意識にほど遠い。広い海を含めると、我が国は世界でも名だたる大国である。竹島問題も尖閣諸島の問題も、南京大虐殺問題や他の問題と同時に真正面から論じて行くべき課題の一つである。あのドイツでさえ欧州全土に3000箇所の慰霊碑を建て、賠償金を支払って来たのだ。海洋国家たる聊かの危惧を、残念ながら我が日本に抱かざるを得ない。いずれにせよ、沖縄の慰霊の日に改めて恒久平和を誓いつつ、きちんと解決すべき問題は山積していることだろうと思う。

 

御嶽(ウタキ)信仰の聖地 久高島遥拝所その他

 

  沖縄は美しいちゅらの海に囲まれた素晴らしい島々である。県花デイゴを始めとし、たくさんの花々や天然記念物の動植物がいる。珍しいお祭の形態はワンサカある。非常に豊かな自然と、旅する者すべてに四国のお接待のようなことをする島もある。日本で最初に櫻が満開になるのは沖縄である。蛇三線の素朴な音色や賑やかなカチャーシーの踊りは我も我もと踊りたくなる。元来朗らかな県民性である。人情が篤い。そんな中で毎年成人式の時、目に余る若者の蛮行があるが、あれだって馬鹿にしてはならぬ。若者に就職口が殆どないからだ。ハコ物政治ではなく、ではどうしたら沖縄の若者が生きられるように出来るのか、あの画面を見て批判するだけではなしに、もっと多くのことを考えるべきだろう。未だに世界に類例がないくらいの米軍キャンプがあり、本土のために圧倒的犠牲を強いられているのだから。観光に行くにも移住するのもいいかも知れないが、過去の歴史の中で、今もって苦しんでいる方々を決して忘れるべきではないだろう。これは日本の恥部であるに間違いはない。沖縄の皆さまには、どうしたら僕たちがいいのだろうかとふと思うことが多い。

 

 

ちゅらの花 県花 デイゴ

 

 今まで森山良子・「さとうきび畑」の歌をBGMに使用しました。本日慰霊の日があったからで、ご了承を!

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