『猫のしっぽ カエルの手』 Vol 12  京都・大原 ベニシアの手づくり暮らし

 

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            『猫のしっぽ カエルの手』 Vol 12

            京都・大原 ベニシアの手づくり暮らし

 

 

             Vol 12   夏の大地の贈りもの

 

 

 蝉の声が山里に朝を告げる。大原に待ちに待った夏がやって来た。緑に包まれた築100年の古民家もそろそろ夏の装い。ベニシアさん、家の中も季節に合わせた室禮(しつらい)を楽しんでいる。「これは10年前ぐらい前、ここに越して来た時、作って貰ったのかなぁ」と自問しながら持ってきたのは暖簾。柿渋と藍で染め上げた涼し気な麻の暖簾が夏の玄関を爽やかに彩る。200種のハーブを育てるベニシアさんの庭も夏の草花たちが競い合うように生い茂ってきた。強い陽射しを受け、植物たちの濃密な命の力が溢れ出す。里では夏野菜の収穫も始まった。豊かな大地が様々な恵みをもたらす。ベニシアさんはそんな夏の恵みを求めて、朝の散歩に出掛けた。「あっカンゾウがある、わぁ綺麗!猫のしっぽぉ!!ああ夏が来たぁ。これ(エノコログサ)干したら綺麗」、ベニシアさんの散歩の目的は、春にみつけておいた小さな木。ヘビイチゴの仲間、野生のクマイチゴだった。真っ赤に熟した実は酸味と仄かな甘さがある。「ぅ~~ん、ワイルド・ストロベリーと似てる味。わたしが取ったら悪いかな。でもジャムのために。有難うねぇ、後は鳥ちゃんのために残してあげたい」。ホンの少しの大地の恵みのお裾分け。ベニシアさん、自分の畑でもベリーを育てている。「あっグーズベリー、最後これ!わたしにとって懐かしいの、グーズベリー!」。日本名は西洋スグリ。ベニシアさんの思い出の味だ。「あのぉイギリスに帰ったら、一番最初に食べたいのはグーズベリー・パイ!イギリスのグーズベリーはもうちょっと大きく生るねぇ。何かちょっと酸っぱいなぁ」。ベニシアさんはこうやって毎朝少しずつ摘み取っておいたベリーを使って、今日はジャムを作る。

 

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        <Venetia’s Herb Recipe> (ワイルドベリージャム)

 「先ずね、こっちの硬いベリーを使う」、集めたベリーを琺瑯鍋で煮る。毎日少しずつしか採れないベリーは冷凍庫で保存し、或る程度貯まったところでジャムにする。「グーズベリーはちょっと酸っぱいから、ラズベリーの甘さを混ぜたら、ちょうどいい甘さになる。そしたら次は砂糖を入れる。砂糖を入れたら焦がさないように、よく掻き混ぜる。水気が出て来たところで、夏らしい爽やかさを足すベニシア流のひと手間。「レモンの香りはレモンバーベナで、ぅわぁ!凄いレモンの香り!!これだけでもハッピーになれるハーブですから」と。レモンバーベナの葉は細かく微塵切りにしてジャムに入れる。ベリーの甘酸っぱさをより一層引き立ててくれる。「ンで、ちょっとペクチンを入れます」、ジャムにトロミをつけるペクチンは煮汁に溶いてから鍋に入れる。「さぁてどんな味かなぁ、わたしグーズベリー大好き!ぅん、凄く美味しい。やっぱりグーズベリー、大好き。懐かしいなぁ」、温かいうちに壜に移して出来上がり。焼きたてのパンやスコーンと一緒に味わえば甘酸っぱい少女時代が蘇る。

 

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          <Venetia’s Gardening Diary> (夏を摘む)

 「夏らしく気温も上がり、わたしの庭もすっかり乾いています。足下にはバジルが伸びて、摘み頃になっていました。紫色の蝶がラベンダーの花を揺らすのを、わたしはじっと見つめていました。畑に下りると、オトギクソウやヤロウが最後の花を咲かせていました。ミチバチ一家が花の上を舞っています。わたしは籠いっぱいに、黄色や白い花を摘みました。静かで美しい一日」

 

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  蝉時雨に包まれる午後、友だち親子(石原文江さんと娘の杏菜ちゃん)と、隣町まで散歩に出掛けました。杏菜ちゃんはベニシアさんの息子・悠仁君の幼馴染。家族ぐるみのお付き合いをしている。隣町までは大原の西の峠を越えて、凡そ3㌔の道のり。杉木立に囲まれた静かな山道を、蜩を聞きながら、先へ先へと進む。歩くこと30分、辿り着いたのは緑の田んぼが広がる山里、京都市静原。人工700人の小さな里・静原。時が止まったような、どこか懐かしい風景が広がっていた。その一角に佇む不思議な家。出て来たのは隅岡樹里さん(31歳)。ここは地元の美味しい野菜を使った野菜料理を楽しめるレストラン。2年半前、民家のリビングを改装してオープンした。この店のシャフ・樹里さんが作る料理は野菜が主役。ビーガン料理と呼ばれ、肉や魚を一切使わないもの。採れ立ての無農薬で新鮮な野菜だけを使って、真心を籠めた料理を作る。自己流で身につけたと言う樹里さんの料理は、素材だけ飛び抜けて、奇をてらわない、優しい味付けが評判だ。一つ一つの野菜を丁寧に扱う樹里さん、素材の持ち味を最大に生かす。それが彼女のモットーだ。「これはね、野菜のグリル用なんです。美味しい野菜ってシンプルに食べるのが美味しくて、岩塩とオリーブ油でマリネして、オーブンで焼くだけなんですけど。本当に美味しく愛情を籠められた野菜って、それだけで美味しかったりするんで。ここで採れた玉葱で、皮がついたまま焼くんですよ、全部捨てるものは殆どなくて、何かぅん、これで完璧なんで」。野菜の声に耳を傾け、大切に戴く。そんな樹里さんの料理に対する姿勢に共感するベニシアさんは度々この店を訪れる。

 

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 前菜は手づくり豆腐とヒジキの梅酢ソテー、バジルの香りが爽やかなジェノバ風夏野菜のマリネだった。メーン・ディッシュは旬の野菜のグリル。じゃが芋や玉葱などをオーブンで焼いただけの飛び切り新鮮な野菜のグリル。それにスープやデザートまで付いた野菜のフルコースだ。「美味しい、ホンマ、この玉葱の皮、ちょっと高級なフレンチフライズって感じですね」、「でも甘いね」、「ぅん、凄く甘い」、「シンプルなものって素材がよくないと」、「この前真似して作ってみたけど、ちょっと違ってた、多分混ぜてない」、「じゃが芋とローズマリーは合うから、よく混ぜてからオーブンへ」、樹里さんの魔法、野菜だけで心もお腹も満たされた。

 

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           <Venetia’s Friends> (大地のご飯)

 毎朝開店前に、樹里さんが欠かさず立ち寄る場所がある。自宅の裏の田んぼを抜けたその先、そこは樹里さんの原点だ。母・加寿子さん(61歳)、朝から一人で畑で汗を流していたのは、樹里さんの母・加寿子さんだった。この畑は加寿子さんが10年ほど前から手がけている家庭菜園。レストランで使う多くの野菜は、この畑で加寿子さんが育てたものだ。農薬は全く使わない。肥料も最低限の有機肥料だけという加寿子さんの畑。よく観ると、あちこちに雑草が生えていたり、堆肥にした生ゴミからカボチャが勝手に育っていたり、この畑には自然が持つ逞しさとしなやかさが溢れている。樹里さんの両親は26年前、自然の中で子供たちを育てたいと静原に移り住んだ。当時樹里さんは5歳、田んぼや小川で、好奇心いっぱいで自然を見つめて過ごして来た。宮沢賢治が大好きな多感な少女だった。大人になった今も、自然とともに生きることを考えながら、静原で暮らしている。「バジルって本当に生命力があって、この香りを嗅ぐと夏が来たぁっていう感じ。香りって何か記憶を思い出しますよね。夏野菜が出来出すと、一気に出来ますから、凄い!お漬物って、そのために出来ているのね、美しいし、一個一個形が違うし、それを料理するって凄い。自分もエネルギーを貰っている気がして、何か元気が出ますよね。こう触っているだけで、じゃが芋、凄いよね、まるで宝石みたい。野菜任せの畑になったら更に凄い。一番の理想なんですけど。お母さんがやってくれてるんだけど、合間合間をぬって、お母さんが楽しみながら作っている。それが野菜に伝わるから、楽しむことを野菜も吸収してるから、本当に美味しく出来るのかなぁって」。

 

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 野菜が持つ自然の力と作り手の気持ち。その両方を味わえば、身体だけでなく、心の栄養にもなる。樹里さんは、そう信じている。日曜日、樹里さんのレストランに、朝から大勢のお客さんが集って来た。樹里さんの発案で、月に一度全粒粉を使ったパンづくりのワーク・ショップ。ベニシアさんもこのイベントを楽しみに駆け付けていた。石臼で小麦を挽き、パンを作る。普段何気なく食べている食事も、その材料や作る過程まで思いを巡らせて欲しい。言葉ではなく、こうして一緒に何かを作ることで、思いを伝えたい。そんな樹里さんを支えているのは、手づくり石窯で、パンを焼いている夫の敦史さん(31歳)で、普段は会社員をしている。まだ自分の道を進み始めた樹里さん。でも日々試行錯誤を重ねながら頑張っている。(食事の場面、「いただっきまぁ~~すぅ!」、「ハイどうぞ!皆さんオカラさんもいっぱいあるから食べてくださいねぇ!」と樹里さんが元気いっぱいだ。

 

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            <Venetia’s Essay> (からだによい食事)

 「若い頃、『食べる物が人を作る』という格言を聞きました。その言葉が心に深く残りました。(ベニシアさんの、今日のお土産であるグーズベリー・ジャムを取り出す。西洋スグリなのと)、そしてからだによい食事が大切だと考えるようになったのです。わたしは黒パンを食べ、ブラウン・シュガーを使い始めました。新鮮な野菜や果物、穀類を中心とした食事に替えたのです。わたしたちが食べる野菜や果物は農家の人々が一生懸命に作ったもの。その苦労を思い、感謝して戴きたいものです。健康は富に勝るもの、健全な精神は健全な身体に宿るのですから」

 陽射しも和らいできた夕暮れ、ベニシアさんは畑へと向かう。5月に植えた夏野菜の畑もそろそろ収穫間近。ここでオリジナルの肥料を作っているベニシアさん、大きく伸びたコンフリーという植物がベニシアさんの畑の栄養源だ。「コンフリーの中の栄養?!窒素とリンとカリウムがたくさん入ってます、いい堆肥が出来る」。夫の正さんが廃材で作ったコンポスト箱。箱と言っても底は素通しだ。その中にコンフリーの葉や雑草や野菜屑などの生ゴミを入れ、臭いが出ないように、もう一度コンフリーで覆う。すると土の中のミミズや微生物たちが、下のほうから少しずつ分解し、栄養抜群の堆肥を作ってくれるのだ。出来上がるのは凡そ3ヶ月後、春に仕込んでおいたものが、今ちょうど使い時期だ。「2~3ヶ月後土に戻ったでしょ完全に!これはいい肥料になると分かる。チョコレートケーキみたいな」。ベニシアさん、出来上がった堆肥はたくさんの実をつけてくれたグーズベリーの樹へ。「又来年美味しい夏の恵みを与えてくれますように」と。ベニシアさんは言う。「植物を育てるのは子育てと同じ、植物たちの声に耳を傾け感謝し楽しみながら、たっぷりと愛情を注ぐこと」。そんなベニシアさんに応えるように、裏庭のノウゼンカヅラが大輪の花を咲かせてくれた。

 

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              <ワイルドベリージャム>

  材料;クマイチゴ・ラズベリー・グーズベリーをそれぞれ合計で600g 砂糖520g レモンバーベナ2枝 ペクチン小さじ二分の一

  ① 鍋にベリーを入れ(水なしで)、弱火で柔らかくなるまで煮る

  ② 砂糖を加え 完全に溶けたら 微塵切りにしたレモンバーベナを入れる

  ③ 煮汁にペクチンを溶かして 鍋に入れて よく混ぜる 壜に移して完成

 

 

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