『猫のしっぽ カエルの手』 Vol 13  京都・大原 ベニシアの手づくり暮らし

 

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           『猫のしっぽ カエルの手』 Vol 13

             京都・大原 ベニシアの手づくり暮らし

 

 

                Vol 13 夏の思い出

 

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  陽炎が立ち上がる緑の大地。青空には夏雲が泳ぐ。8月の京都・大原。築100年の古民家に移り住み、季節に寄り添って暮らしているベニシアさんにとって、13回目の夏がやって来た。不安定な天気が続いた後に、漸く顔を出した真夏の太陽。庭に植えられた200種を超えるハーブや夏の花たちも元気いっぱい育っていた。摘み取ったばかりのローズマリーはキッチンに直行!「キマとジョーと一緒に3人でちょっとピクニックに行きたい」、4人の子供と2人の孫を持つベニシアさん、夏の殆どを孫たちと過ごしている。もどした高野豆腐に味醂とダシで味をつけ、ローズマリーをまぶして揚げたお惣菜は孫たちの好物だ。サンドウィッチにローストチキン、本格的なピクニック・ランチが出来上がった。ピクニックに欠かせないのが、イギリスから持ってきたバスケット。必要な物を収納出来る優れもの。「ばぁ、おはよう!」、「おはよう!」、いつもより寝坊した孫たちが起きてきた。「どこ行くの?」、「川行こうか、その後に音無しの滝、知ってる?ジョー行ったことあるよね。滝がある場所涼しい。凄く涼しい」。夏休み一つでも多くの思い出を作りたい。バスケットと網を持ったら準備オーッケーだぁ!「暑いなぁ、凄いなぁ!」、比叡山を中心に広がる山並み。盆地の大原は四季の変化をくっきりと伝える。だから夏は猛暑。でも暑さを楽しんでしまえば、もうこっちのものだ。「テディベアーズ・ピクニック」の鼻歌を歌いだすベニシアさん。「知ってる?この歌」、ベニシアさんも子供の頃、ピクニックが大好きだった。目的の川に到着し早速水に浸かる孫たち。「冷たいんで気持ちいい?」、たっぷりと水遊びを楽しんだ後は、魚と友だちになる。普段は京都の中心街に住んでいるジョー君とキマちゃん、川にはどんな生き物がいるか興味津々。大原の川も次第に整備が進んでいる。でもここにはまだまだ山里ならではの生き物たちがたくさん住んでいる。「ヤゴ」・「ヨシノボリ」・「シマドジョウ」などなど。「どじょう!どじょう!」とジョー君が叫ぶ。キマちゃんも必死だ。川の水は冷たい。川底はヌルヌルしている。そして川には生命が満ち溢れている。一つ一つ身体で感じ、確かめて欲しいとベニシアさんは思っている。午前中はあっという間に過ぎた。二人の孫たちを、ベニシアさん、とっておきのランチ・スポットに案内する。せせらぎの音とともに見えて来たのは音無しの滝。その昔、偉い坊さんがお経を唱えたら、その声に同調して滝の音が消えてしまったという伝説からこう呼ばれている。ちゃんとクロスを広げて、イギリス流のピクニック・ランチの始まり。バスケットから取り出したのは本物のワイン・グラス。飲み物はワインではなく、ベニシアさん特製の赤紫蘇ジュース。お転婆なキマちゃんも、こうしてマナーを身につけて行く。大原の自然はまさにワンダーランド。ともに過ごす中で、大切なことが少しずつでも伝わって行きますように、ベニシアさんは願っている。

 

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 夏の昼下がり、古民家の中には、開け放った窓から、気持ちよい風が吹き込む。小川で遊び疲れたキマちゃんとジョー君、束の間、夢の世界へ。

 

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                     <Venetia’s Diary> (水やり)

 「夏は正午を過ぎると一気に気温は上がります。山の陰が村を覆うまで、大原の里は静まり返り、外には人っこ一人見当たりません。夕方になると、みんな外に出てきます。植物は咽喉を渇かせ、新鮮で、冷たい我が家の井戸水を待ちわびています。わたしはそれぞれの花壇に5分ずつホースを置いて水をやります。軽い散水を何度も繰り返すより、一度たっぷり水やりをするほうが植物は喜びます。植物も一晩かけてゆっくりと水分を吸収したいのではないでしょうか。水は命の源なのです」

 ベニシアさん、夏になると楽しみにしていることがある。収穫をして、ミントを持ってやって来たのは大原の農産物直売所「もちの館」。坂本さんに、スイスリキュールミントを持って来た。「あっ凄い香り!今日はパスタに入れるんです」とニコニコして大喜び。今日ここにある食堂を借り切って、大原の野菜を美味しく食べて貰う食事会が開かれる。夏と冬、年2回行われるこの食事会のお料理はフレンチ。そしてこの食事会のシェフとして招かれたのが、大原で生まれ育ったフランチ・シェフの坂本三郎さん(51歳)だ。

 

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          <Venetia’s Friends> (味を伝える)

 京都・嵐山にある専門学校。坂本さんは実はレストランのシェフではなく、ここの准教授なのだ。この学校で真剣に授業を聞いているのは、管理栄養士を目指している生徒たち。今日は地元で採れた「ベニアカリ」という品種のじゃが芋を使って、目の前で料理し、その味を生徒に確かめさせる。それが坂本さんの授業だ。素材の持つ特性を充分に生かした調理法を見極めること、どんなに美味しい野菜を使っても、その特性を無視したら、本当の美味しい料理は出来ない。「美味しい?」、「どういうところが普通のじゃが芋と違う?」、「食感が違います」、「どう食感が違う?澱粉が多いと分かる?こういう品種もあるってこと、栄養指導をするにおいても食材を知っておくこと。それぞれの知識に幅が出来るから大事なことやで!」。素材と真摯に向き合い、すべての工程を自分自身の手で行う料理。それを教えるために坂本さんはここにいる。(カツラ剥きが始まる)。かつてフランスに留学し、三ツ星レストランで修行を積んだ坂本さん。やがて数々のコンクールに入賞するまでになった。しかし坂本さんは今も店を持たず、若者に料理を教える先生をしている。「ちっちゃい頃は、季節ごとに色んな自然のものが採れまして。春ですとイタドリが採れて、夏ですと小川に行って、色んな川魚と遊んだりとか。旬のものを新鮮な状態で、そのまま戴けるという、小さい頃からそういったことを繰り返しますと、自然と野菜を中心とした食材を見極める目というのが備わったような気がしますね」。大原の野菜で、味覚を養った坂本さん、今最も力を入れていることがある。坂本さんの畑で力説する。「これがクルジェットニソワールと言います。ニースの丸いズッキーニなんです。ラタトゥーユという野菜の煮込みに欠かせないものです」。その他ここで栽培している野菜はパプリカやカルドンなど珍しい野菜ばかりだ。坂本さん、本物の味を子供たちに知って貰うために、教材に使う西洋野菜をこの大原で育てているのだ。畑を管理しているのは父の四郎さん。周りは伝統の京野菜を作る中、坂本さんが翻訳したフランス語の資料を参考に試行錯誤を繰り返し、今では年間50種類ほどの西洋野菜を作るまでになった。父・四郎さんは、「最初どういう野菜か分からんかったけど、この時季どうすればいいものか、やっと分かったんで、どうせなら変わった野菜を作ったらええと」、「楽しいですか」の問いに、「楽しいねぇ」と笑い返す。四郎さんと、豊かな土壌のお陰で、大原から美味しい西洋野菜が誕生した。「やはりホンマモンの味を学生に知って貰いたい」と、坂本さんが続く。ホンマモンの味を学生だけでなく、大人となった皆にも知って欲しいと、坂本さんの思いは口コミで広がり、内外からたくさんの人が集って来るようになった。

 

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 先ずは大原産の紫蘇ジュースを、シャンパン割りで乾杯!早速料理が運ばれて来た。前菜は田舎風パテとフレッシュサラダ。あの畑で採れたズッキーニも入っている。大原の野菜を生かしたフランス料理に、ベニシアさんも食欲が沸いて来る。食事の進み具合を見ながら、坂本さんは次なる料理を作る。それはベニシアさんが持って来たミント入りのアンチョビのスパゲッティーニ、ミントの爽やかな風味が漂う坂本さんのオリジナルだ。ベニシアさん、自分で育てたミントの活躍が嬉しい。「ミント、利いてるねぇ」、「ぅん、坂本さんの発想が面白いのよね、いつもアイディアがあると思う」、「そりゃそうだよね」。大原の自然がもたらす美味しい恵み。「その美味しい味を最大に生かす料理を出して行きたい」と、坂本さんの伝えたい思いがここにある。舌が憶えた味、それは一生忘れない。

 

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 夏休み、いつもより自分の時間が取れたら、ベニシアさん石鹸を作る。今からラベンダーとオートミールの石鹸を作りたいと思います。

 

         <Venetia’s Herb Recipe> (ラベンダーとオートミールの石鹸)

 「先ず水にラベンダー(乾燥)を入れて30分ぐらい煎じます。それをやっている間に石鹸をもうちょっと細かくするほうがいいから、わたしはミキサーを使います」。まだ下水が整備されていない大原。生活廃水はそのまま川に流れ出る。ベニシアさんがいつも気にしていること。「この石鹸は洗顔用石鹸。お風呂でも使っているから、ローズベリーでする場合もある。オートミールには保湿や角質を柔らかくする効果があるそうだ。そしてラベンダーには抗菌作用があり、ニキビなどを防ぐ効果がある。煎じていたラベンダーを漉す、320ml。煎じた液は漉して冷ましておく。ここから先は、ジョー君とキマちゃんの出番だ。ラベンダーを煎じた液に、保湿効果がある蜂蜜と、ラベンダーのエッセンシャルオイルを数滴垂らし、混ぜながら少しずつ入れる。二人の孫たちは、この石鹸づくりが大好き。ちょっとした粘土遊びといったところ。「この石鹸を使ったら、そこの川の動物にも安心で住めるよ」。皆それぞれに好きな形で作ったら、そのまま1ヶ月ほど乾燥させて硬くなれば完成だ。手づくりの洗顔石鹸。肌にも自然にも優しい。

 

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          <Venetia’s Essay> (きれいな水)

 「わたしは子供の頃、小さな島に暮らしていました。どこまでも続く空と海を何時間でも眺めてたものです。わたしたちが暮らすこの地球は水と空気のお陰で、宇宙で一番美しい星なのだと思っていました。地球上には、今も地球が生まれた時とほぼ同量の水があるのは驚くべきことです。地球の7割を覆う水はずっと循環を続けているのです。地面を覆う緑の森が空気を洗浄し、水も浄化する。自然はそれほど優しいものです。わたしたちを取り囲む美しい恵み深い自然を守りたいと思います。きれいな空気と水は、汚染されることなく子孫に残すべき最も大切なものなのです。

 夕暮れ、陽が落ちた後の楽しみは、「花火をやるよ」と言ったら、近所のみんなが集った。ベニシアさんと子供たち、今年の夏は忘れられない思い出がいっぱい出来た。

 

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          <ラベンダーとオートミールの石鹸>

  材料;乾燥ラベンダー25g オートミール50g 蜂蜜80g エッセンシャルオイル20滴 粒状石鹸750g 水500ml

  ① 水にラベンダーを入れ 弱火で20分煎じ 石鹸を粉状にする

  ② 煎じた液に 蜂蜜・エッセンシャルオイルを入れ オートミールに混ぜた石鹸を加える

  ③ 粘土状になるまで捏ね 形を整える 2~4週間冷暗所で乾燥させる

 

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