甘鯛(ぐじ)

 

 

  若狭から届いた甘鯛 まるまるとでかい一本 我が妻は この料理でほっとするだろうな

 

 

 

 

                     甘鯛(ぐじ)

 

 

 

  お魚屋さんが、「これから旬ですよ」と自慢しつつ当家に立派な甘鯛一本がやってきた。今日午後には、父が茅ケ岳から帰ってくる、ちょうどよい日。今夜のシェフは私がやろう。でもこの甘鯛(あまだい)、甘鯛といいつつも、これは「あやかり鯛」の一種で鯛の仲間ではない。然し姿かたちは極めて美味い魚で、その意味では決して鯛にも負けない。アマダイ科に属し、白皮・赤アマ・黄アマの三種がある。暖流圏の魚で、魚は南は東シナ海から台湾あたりまで多く棲息している。最近はジェット機で香港から新鮮なものが届く。これらは東京・大阪に運ばれてくる。そのことは高級魚として元が取れることを意味しているに他ならない。味では身のしまりがいい白皮が第一とされているが、身の軟弱な赤アマも扱いようで非常に美味。日本海では白皮は漁れないが、京都では若狭に棲息する赤アマを「ぐじ」と呼び、京料理で一名物となっている。旬は秋から冬。いよいよこれからが本命の魚と言えそうである。

 駿河湾に、「興津鯛」というのがあるが、これも赤アマのことである。命名の由来は興津に多く漁れるからであり、或いは昔、おきつなる女性(文献などでもどうしても分からない)が、この干物を徳川家康に献上し、多くのお褒めをあずかることになったからだと言われている。甘鯛は三種とも大きいものは体長30~100㍍のかなりな深いところに棲んでいる。ただどういう訳か、産地で捕りたてをそのまま食べても美味くない。どういう訳か水っぽいのだ。ところがそれを一塩の開き干しにすると、俄然美味くなる。戦前東京では興津鯛と言えば、「甘塩の干物」だったと言われているぐらいだ。

 グジ、即ち甘鯛のことを天下に知らしめた功績は京都人であった。まだ交通不便な時代、若狭から馬の背に積んで山越えをして運ばれてきた一塩のグジは殆ど水気が抜け、ほどよくなって鮮魚がない京都では貴重な食材で、京都人はこのグジから色々な料理を編み出した。椀物・酒蒸し・照り焼き・味噌漬け、懐石では一塩のグジを細切りにして向付けに珍重する。グジの頭を酒蒸しにして骨の髄までしゃぶりつく時には、ついぞ食べるのに夢中になって酒を飲むことを忘れるほどである。頭は一度焼いてから淡味の汁(つゆ)をはって食べるのもいいものである。ぐじ賛美、ひたすら賛美の気持ちを決して忘れっこないだろう。

 

 

 image

 

 

広告
カテゴリー: 料理 パーマリンク

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

%s と連携中