冬の櫻~妙見大悲は北の北

 

 

 ジュウガツザクラ(御会式櫻)

 

 

 

                  冬の櫻~妙見大悲は北の北

 

 あちこちのブログに、冬に咲く櫻の様子が伝わっています。冬櫻と、いっぱひとからげて極端に申し上げておいでのようですが、寒い中、凛と咲く櫻の整理をここで少々いたしましょう。寒くなればなるほど、櫻が咲いている状況は少ないけれど、どのブログの記事もなかなか素敵な記事になっていますね。さて一般に冬櫻と申しますのは、極論に申し上げれば、ジュウガツザクラのことです。二度櫻ではないかとのご指摘もありますが、二度咲くから二度櫻ではないのです。その名はちゃんと国の天然記念物の指定も受けている立派な二度櫻がありまして、後述致します。無論、春になったのではないかとお花が勘違いをして晩秋に咲く染井吉野もありますから、一概に否定するものではありません。

 ジュウガツザクラは花期が結構永くて、寒気の中にひっそりと咲きます。上の写真はジュウガツザクラの画像ですが、この時季に咲く櫻は殆どが淡紅から白に近いお花でありましょう。細かいジュウガツザクラの条件はありますが、皆さまから御覧になられて、確かこれはジュウガツザクラではないかと一目で分かる目安は、雄しべが極端に長く飛び出ていることです。花期は十月から、来期の四月上旬まで断続的に咲き続けます。この花はコヒガン系の花で、コヒガンはマメザクラと交配種でできた櫻です。ですから全国各地に散見されるお花です。和歌山・紀三井寺や京都・仁和寺や広隆寺などの庭内に密やかにこれら櫻花が咲いています。コヒガンは派手に咲く櫻ですが、ジュウガツザクラは奇妙に花びらの数は少なくパラパラと咲きます。何だかとってもいとおしくなる櫻です。私が最も好きな櫻の一つに「思い川櫻」というのがありますが、小山の修道院にあったジュウガツザクラの実生から久保田秀夫さんが育成されてできた櫻です。この思い川櫻は真冬に花をつけることはありませんが、ジュウガツザクラの一つの品種として憶えておいてください。

 よく言われる二度櫻とは、一般的に櫻花が年に二回花をつけるからということになっていますが、誤解なきように冬に咲く花ではないので、勘違いをなさらないように敢えて書かせて戴きましょう。立派な名称がある「二度櫻」は、その原木が岐阜県揖斐郡大野町の水田の中、すがしくある古墳の上に咲いています。天保年間に台風で倒木したのですが、その根元から鮮やかに蘇りました。単弁の花、重弁の花、二段咲きの花がそれぞれの枝に咲きます。落葉高木で、花の単弁では小ぶりで、やや白色を帯びて咲きます。重弁のほうは3,5cmとやや大きく淡紅色をしています。驚くことに更に後から二段咲きの花びらをつけます。先ず初めに外側の花が咲き、その後内側から花をつけるのです。花期は四月下旬ですが、国の天然記念物となっている貴重な櫻です。ですから単に二度花をつけたからといって、二度櫻と表現してほしくありません。

 再び冬櫻のお話に戻りましょう。群馬県多野郡鬼石町に、櫻山公園が御座います。神流川と、その支流三波(さんば)川の流域を占める鬼石町は、庭石の三波石の特産地で、余談ですが当家にもそこから運ばれた庭石があります。町の北西部に位置する櫻山公園は明治41年(1908)、日露戦争の戦勝記念として作られたものです。標高593㍍の櫻山山頂付近にソメイヨシノとカエデが、それぞれ1000本ずつ植えられました。ところが、ソメイヨシノの中に冬櫻が混じっていたために、次第に冬櫻が大勢を占め、今では初冬の花見の名所として知られるようになったのです。今でも毎年植樹を続けられ、現在はどうでしょう、多分8000本以上にもなっているでしょうか。町の方々のご努力に頭が下がります。さてこの冬櫻と申しますのは、完全にマメザクラを片親とした雑種の櫻です。個体はジュウガツザクラと一線をはっきりと画します。この冬櫻も断続的に花をつけ、一端開花をやめ、再び春に咲きます。でもここの冬櫻が最も立派に見える時季は、十一月から師走にかけ、山頂から見える秩父連山がうっすらと雪化粧をした時でありましょうか。JR線高崎線本庄駅から鬼石町までバスに揺られること40分、バス停鬼石で下車し、更にタクシーで15分。全山花の海となっていることでしょう。花期が長いことでも有名です。

 エドヒガン系の冬の櫻に、「四季櫻(シキザクラ)」というのがありますが、各地で栽培され、秋から冬にかけて目だって咲くために、各地で独特な名称がつけられているのが多いようです。マメザクラとエドヒガンの交配種で、落葉小高木。枝は横に広がり、樹形は傘状になります。成葉は長さ約6cmで線状または長楕円形をしています。両面に羽毛が出てすぐ分かります。蜜腺は葉柄の上端、又は葉身の基部にあり、普通は一個、又は二個の花をつけます。雄しべは無毛で、淡紅か白色の花をつけます。少々淋しくなるような花の風情ですが、私はいつもこの櫻にはよく咲いてくれたねぇと褒めてあげることにしています。花期は十月から十二月まで、そして改めて四月上旬に再び花をつけます。四季櫻といわれる由縁です。

 伊豆大島は大島櫻の発祥地として有名ですが、ここにも冬に咲く櫻があります。カンザキオオシマといわれる品種で、十二月から咲き始めます。落葉高木で花序は散坊状で、5~6の花から咲きます。萼筒は長鐘形で、萼片は披針計で、少数の緑毛があります。花弁は5個。果実は真っ黒でやや甘味があるんですよ。花期は十二月から三月まで。通常の、真っ白なオオシマザクラとそう変わりはありません。でもソメイヨシノの原木作りにも役立ったように、色々な品種改良、もしくは開発に使われてきました。二月に満開になる「河津櫻」が、そのいい例でしょうか。

 「不断櫻(フダンザクラ)」のことも書かなくてはなりません。フダンザクラの原木は三重県鈴鹿市白子町寺家の観音寺に古くから伝えられている櫻です。これも国の天然記念物に指定されています。十月から咲き始め、来年の五月まで咲くのですから、不断の称号がつけられた由縁です。これには各種の論争があって、九州を除いた各地の山野に咲く「霞櫻(カスミザクラ)」の品種としているとか、いや似ても似つかないとかかまびすしいようです。私見ではヤマザクラとオオシマザクラの雑種ではないかと考えています。落葉高木で、樹幹は直立して咲いています。冬の花は少々小さく可愛い花です。萼片は披針形で細かい鋸葉があります。若芽は常時出ておりまして、やや紅紫色を帯びた黄褐色です。成葉は長楕円形になります。花序は散坊状にパラリパラリとつきます。私は伊勢の神宮の行き帰りに、殆ど毎回この櫻に逢いに行きます。今月の新嘗祭には行けるでしょうか。そしたら必ず不断櫻に、お逢いして、いつも有難うねぇと伝えるつもりです。

 更にチョウジザクラ系も寒さが大好きな櫻です。高山に咲くのが一般ですが、四季咲丁字櫻(シキザキチョウジザクラ)という櫻も冬に咲く櫻です。岐阜県に多く栽培されておりますが、ちゃんと和名で呼ばれているのに不思議な力を秘めています。岐阜県の山々に自生しているミヤマチョウジが変化したもので、多分栽培種のフユザクラとの間の雑種ではないかと思っています。丁字というぐらいですから、Tの字のように横棒は花で、萼筒が結構長く5ミリもあるんですよ。落葉小高木で、実に健気な櫻です。私たちが岐阜県の山に可能性を感じ取って手当てをした由縁でもありました。花期は九月から十二月までと、四月から六月まで散見されます。

 そして最後に支那実櫻(シナミザクラ)のことも書いておきましょう。実はこのシナミザクラの花期は三月上旬から下旬にかけてなのですが、これとジュウガツザクラが雑品種として栽培されたのが子福櫻(コフクザクラ)です。八重で小さくて可愛い櫻花です。熱海で栽培されたのですが、関西や我が安行にもその多くが出まわって、寒い時季を大いに楽しませてくれています。八重でフサフサしているところから子福の名がついたものでしょう。花弁は20~50個と多く、樹皮は灰褐色をしています。花序は散形状に2~4個つけます。小さいけれど、華やかさがある櫻なので、私はシナミザクラとエドヒガンの雑種ではないかと推定しています。花期は十月上旬から一月までと、三月下旬から四月上旬まで観れます。本当に可愛い花ですよ。今の時季一般的に散見される八重の櫻はこの品種ではないかと推測しています。とにかく冬の櫻はちらほらと咲くことが多く、実に健気で可愛いものだといつもそのように観ています。有難うの心を籠めて!

 こうして観ると、冬に咲く櫻は結構あるものですね。これはいっぱひとからげで“冬櫻”だと決め付けることなく、よくご注意され丁寧にご鑑賞して戴きたいものだと、心から願っています。私どもの苗場は安行にありますが、まだ小さなものです。品種はたったの53種しかありません。高尾の森林学園や静岡にある国立遺伝研究所や日本花の会(重機のKOMATSUが主宰し企業メセナ)の結城市にある櫻の苗場は皆広大なものです。松前の櫻の実験畑も見逃してはならないでしょう。日本さくらの会(競輪・競馬などの売上金から運営されている)や、純然たる民間の私たちの苗場は関東ローム層で痩せている土地ですが、安行の地は植木には最適な場所だと信じています。櫻を通して、千年先の日本文化を考える機能を少しでも果たして行ければ幸いなことです。尚副題の「妙見大悲」の一節は、『梁塵秘抄・287』にある「妙見大悲者は北の北にぞおはします 衆生願を満てむとて 空には星とぞ見ゑたまふ」からとっています。寒い日、冴え冴えと観える夜空、そして特に北極星などに、冬に咲く櫻の健気さを念じ奉りて書かせて戴きました。北の大地ニューヨーク、ヤンキースタジアムでフィリーズとヤンキースが熱戦を繰り広げられています。松井秀喜が初打席でツーラン・ホームランをかっとばし、続く打席では単打ながら2点タイムリー、今また3打席目で2点タイムリーのツーベース。直後松井へ大観客からMVPコールが満場を支配致しました。そこに画面で松井選手のご両親のお姿がありました。どんなにかお喜びでありましょう。そして何とワールドシリーズで1試合6打点はワールド記録のタイ記録だそうです。現在7対3でヤンキースがリードしています。そんな熱戦をオフィスで観戦しながら、これをアップしています。松井と櫻のお話、何てハッピー日なのでしょう。この記事も実によく楽しんで書かせて戴きました。今日もお読み戴きまして、本当に有難う御座いました!

 

 

 

清冽な印象の「思い川櫻」 (小山市郊外の修道院に咲くが、小山市の市花ともなっている)

 

 

 

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