師走 冬の和菓子

 

 

 

  真盛豆                はなびら餅                干菓子

 

 

 

 

 

          師走 冬の和菓子

 

 

 今朝のお粥さんの時、父が、子ども達にクリスマスをやったらどうかというので納得、イクメン(育児を楽しむパパのこと)用の抱っこひもやパパバッグに色々詰めて、大風と杏と一緒に師走の町へ。タクシーから見る華やかなクリスマス・イルミネーションや飾りつけなど、杏の眼は大きな目を興味深々にきょろきょろさせて見ていた。お出掛け前にたっぷりと哺乳瓶でミルクを飲まされた大風は眠りっ放し。やがて渋谷・猿楽町にあるクリスマス専門店の ヒルサイドテラス内・代官山クリスマスカンパニーへ。息を飲むような美しい色彩に溢れ、まさにクリスマス・グッズ専門店らしい素敵な小物ばかり、さすがの杏もやや興奮気味。大風もクリスマス音楽の大音響で目覚め、不思議そうにキョロキョロと。ぅふふ、まぁあれもこれもと欲深く色んなグッズを購入し、午後早く帰った妻とともに、小さなクリスマスツリーを飾りたり。猩々木(ポインセチア)や、クリスマス・ホーリーなどを飾ったら途端にいい雰囲気に仕上がってしまった。永年咲いてくれているシャコバサボテンと、先日購入したばかりの真紅のシクラメンと、あれもこれもと一気にそれらしくなって来て、これを見た父は満足気に、お母さんはにぎやかなことが大好きだったから、きっと喜んでいるだろうと言い残し私たちの部屋からたち去る。確かに、クリスマスの思い出は母との濃密な思い出が殆どで、そして色目にも鮮やかに母の笑顔が蘇ってくるのだった。

 タクシーの中から歩道にある鈴懸の木は僅かに残った黄葉の間から、ポンポンポンと繋がって連鎖するように茶色い実をたくさん下げていた。妻は淡紫や濃い赤紫や、四種類の彩りに咲いたクリスマス・ローズの切花と、枳殻の白い花とよく似た「ベツレヘムの星(オーニソガラム)」の鉢植えを二つ抱えて買って帰った。花期は確か櫻の時季と同じ頃だったはずだが、何と立派に咲いているではないか。輸入花だろうか、6枚の白い花びらを持つ「ベツレヘムの星」は如何にも純白で、妻によく似た花のような気がした。有難う、よく気づいてくれた。これでクリスマス用の花々もいっぱいになり、その上、妻は紅白のポインセチアの花と庭の松を採って来て合わせ、床の間に、この時季用のお花を活けてくれた。あっと言う間にほぼ整ったようだ。

 このところ妻とゆっくり茶を飲む機会がなかなか取れなかったが、叔母の発案で、皆で濃茶を午後遅く飲むことにした。出て来た和菓子は見事な椿餅。葉の先端が切り取られていて、和菓子とは言え、美しさに見とれ惚れ惚れとした。餡も品のいいお味が何とも言えない。午後も遅い三時の時間の濃茶に、今夜は多分眠れなくなるかもよと、妻と顔を見合わせる。子供たちは、別室でジュースやお菓子を食べ楽しんでいることだろう。家族して、こうしてゆっくりと飲むお茶は実にいいもので、クリスマスの時季、欧米では必ず見られる花や木がある。ドイツトウヒと言われるが、常緑で三角形のように対生する樹で、高さは30~50㍍にもなる大樹だ。多彩な豆電球や飾りをつけて、華やかな雰囲気を作り出すのだ。又ヤドリギの下にいる女性に、クリスマスにはキスをしてもいい習慣があるが、日本には定着していない。節分の柊(ヒイラギ)と同様に魔除として玄関に飾られるが、日本の柊とは違って実が本当に赤く美しい。柊を飾ったお店や家々が欧米ではあちこちで見られる。今でも北欧に色濃く残る冬至の習慣とキリスト生誕話がくっついたのではないかとする説は有力なのだろう。別にそれに反抗するわけではないが、今夜は敢えてクリスマスのお話ではなく、師走の時期によく活用される和菓子どもを書きたいと思う。

 

 

 いただき餅                        蓬が島(よもぎがしま)

 

 

   真盛豆~京の名物。北野西方寺という尼寺で作られた。黒豆を水につけてふやかし、十二月に軒下に吊って乾かした茎大根の葉を粉にして衣にし、豆に降り掛けて作った手のこんだものである。今も尼僧の手になるものだが、御寺に出入りの菓子匠・金谷に伝授し、黒豆を煎り、黒は粉、黒砂糖に塩を足し、黒海苔をして製造する。

   焼き餅~搗き立てのお餅を延ばして小豆餡を包み、鉄板で両面を焼く。鉄板で両面を焼いた素朴なものだが、甘味を抑え、適当な大きさが実に心地よい。京都・下鴨神社の神馬堂か、大阪十三の焼き餅が特に有名だろう。

   蒸し菓子~薯蕷(しょよ)饅頭や蕎麦饅頭、更には蒸しカステーラなどの季節の蒸し菓子が、この時季に特に喜ばれる。蒸籠(せいろう)や食籠(じきろう)に入れ湯気が上がる温かいものは、特別に茶の湯の亭主が喜ばれるものだろう。薯蕷饅頭は主に京阪から起こったもので、「芋」を皮にしている。皮を厚くして蒸したものの表皮が薄くむけ、皮が羅紗のようになるのを「おぼろまんじゅう」と言った。搗き立ての、お正月餅に餡を包み「試しの餅」になったことだろう。

   干菓子~モロコシの類で、この場合雪を連想した「雪輪」や「雪輪煎餅」や「越しの雪」や「松ヶ枝」などが殆どである。

   勅題菓子・干支菓子~明治中期頃、京都の亀屋良則が新年の嘉祝用に、その年に因んだ意匠菓子が創作された。勅使菓子とは干支菓子のことで、菓子職人の腕の見せ所を思われる。

   蓬が島~島台の上に若松を一枝添え五本の豊かな餡を薯蕷の皮で巻いてあるのが蓬が島である。餡の中に三色の子持ち餡が仕込んである。

   はなびら餅~はなびら餅は如何にも初春に相応しい和菓子で、「おはなびら」とも呼ばれ、女性的な感性を呼び起こされる。花びら餅は宮中で行われた新年のお祝い料理には欠かせなかったからである。直径17cmに丸く伸ばされた白餅に、牛蒡の砂糖煮、甘く練った白味噌、小豆色をした菱型の餅を入れて、真ん中から二つ折りにされたものである。薄く伸ばした白餅の中に畳み込まれたものが、薄暮れないにほんのりと透けて見えることから「花びら」の名が出たとされている。「花びらもちの美くしへなる」とあり、宮中では、これを「お祝いのおかちに」と言えそうである。「かち」とは江戸時代の言葉でお餅のことを言うようだ。今でこそ花びら餅は丸餅と菱型餅を兼ねたものだが、本来は梅の花をシンボライズされたものであったろう。この菱型にされたものは櫻町天皇の頃からだったと言われている。(櫻町天皇は第115代天皇)。もともと花びら餅は関西もものだが、関西では白味噌仕立ての丸餅をお雑煮にして祝う習慣があって、花びら餅は「包み雑煮」の意味を兼ねていたお祝いをする習慣で、取り分けおめでたい正月用の和菓子として重宝されたものだった。こうした花びら餅は、茶道の初釜にも使われ、独楽盆に乗せられ点心とするわけだが、どの流派でもというわけではなく、主に裏千家に限られている。因みに表千家では「常盤饅頭」が主役である。

   椿餅~『源氏物語』の「若菜」の上に、「つぎつぎの殿上人は すのこのわらふだけして わざとなく つばいもちひ なにかしをしかうじやうのもの供 さまざまにはこのふたどものに とりまぜつつあるを わかき人々 そぼれ取り食ふ」とあり、この「つばいもち」は唐菓子の一種であるとされている。北村季吟の「源氏物語満月抄」によると、「椿の葉を合わせ もちひの粉にあまづらをかけて包みたるなり」とある。そうだとすると、御餅の性質からするとかなり趣の変わったものであり、日本の菓子として独立性を持った最初の和のお菓子であっただろうと推測される。作り方は道明寺ほしいを水洗いして水をよく切る。これを蒸籠で蒸し上げた後、砂糖・食塩を加え混ぜ合わせ、手水を使いながら、餡を包み、小判型とし、椿の葉を、葉表が内側になるように上下にはさんで仕上げる。現在の椿餅は葉の両端を少しずつ切ったものではさみ、上新粉に砂糖を加えてこね、蒸したものである。

   鶯餅~白蜜に糖蜜を加え、よく揉み解す。これを再び臼で搗き直す。充分に搗きあがったら、浮き粉をまいた板の上で小さく切って平らにのばし、ひとへらで並餡をすくいいれ、二つ折りにして包み、青い黄粉をまぶす。その色彩がウグイスの羽色を連想させ、又餅の両端をとがらせてタカチも真似ようとした。

   紅梅焼き~幕末の江戸で作られた干菓子で、「紅梅焼は 小麦粉に砂糖を和し 扁平にし 梅形或いは櫻形に押し抜き 平鉄鍋上にて焼きたる一種の鹿餅なり」と物の本に書いてある通り、直径二寸(約6cm)ぐらいで、違った形のものもあり、米粉で作ったものもあるようである。

   いただき餅~二月十五日の涅槃会には、新粉で作り、小豆餡をつけた頂き餅を食べた。大阪では正月餅を刻んで色とりどりのアラレを作って祝った。京阪では三月三日に、餡玉の下をお餅で囲むようにした「いただき」を食べたものらしい。

 師走と言い、新正月と言い、茶の湯の席では大切なお茶が給される。クリスマスで盛り上がってケーキを戴くのもいいが、和の特別な感性に耳を貸したいものだ。所詮クリスマスとは北欧で多く今でも行われている冬至の儀式以外の何物でもないだろう。キリストの誕生は別途の日にあるというのは、まんざら嘘ではないかも知れない。クリスチャンにとって、春のお彼岸の後にある復活祭がクリスマス以上に大事な日ではなかろうか。人間に原罪を負わせたキリスト教は、佛教の、佛心をあくまで信じ人間を何処までも肯定する宗教とは違い、私にはやや窮屈に感じているのは可笑しなことだろうか。それでもクリスマスにおいて、子供たちにファンタジーの夢を精一杯見せてあげるのが親たる勤めなのだろう。

 

 

 椿餅                          鶯餅

 

 

 今宵のBGMは多夢さん作曲の、『満天の星の下で』 

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