歌会始 お題「光」

 

 

 最後 天皇陛下御製の御歌が 朗唱されていらっしゃる場面 

 

 

 

             歌会始 お題「光」

 

 

 オフィスから外を見遣ると、皇居の森が紺碧の青空に映えて美しく輝いていました。気温は2,8℃で、凛とした大気の中にも光が溢れるほど満ちておりました。予めビデオ収録しておいた「歌会始」。帰宅し早速見せて頂きました。今年も多くの感動がありました。一般応募者は23,346首とか、中でも天皇・皇后両陛下を御前にして朗唱される10名の栄えある一般の当選者たち。ご皇族の方々も、選者や召人や、ご参列者一向も皆さん晴れがましいお顔です。静まり返った正殿・松の間、侍従と侍女が両陛下の御前に、御製や御歌の懐紙が置かれる。今年もこうしてテレビで中継され見られることに大いに誇りと喜びを感じられてなりませぬ。

 

   平成22年歌会始 お題「光」

 御製(天皇陛下のお歌 おほみうた)

木漏れ日の光を受けて落ち葉敷く小道の真中(まなか)草青みたり
 皇后陛下御歌 (きさいのみやのみうた)

君とゆく道の果(は)たての遠白(とほしろ)く夕暮れてなほ光あるらし
 皇太子殿下お歌 (ひつぎのみこのみうた)

雲の上(へ)に太陽の光はいできたり富士の山はだ赤く照らせり
 皇太子妃殿下お歌 (ひつぎのみこのみめのみうた)

池の面に立つさざ波は冬の日の光をうけて明かくきらめく
 文仁親王殿下お歌

イグアスの蛍は数多(あまた)光りつつ散り交(か)ふ影は星の如くに
 文仁親王妃紀子殿下お歌 (皇族代表として朗唱されたお歌)

早春の光さやけく木々の間に咲きそめにけるかたかごの花

 

 召人 武川忠一

夕空に赤き光をたもちつつ雲ゆつくりと廣がりてゆく
 
 選者 岡井 隆

光あればかならず影の寄りそふを肯(うべな)ひながら老いゆくわれは
 選者 篠 弘

金箔の光る背文字に声掛けて朝の書斎へはひりきたりつ
 選者 三枝昂之

あたらしき一歩をわれに促して山河は春へ光をふくむ
 選者 河野裕子 (今回選者代表として朗唱されたお歌)

白梅(しらうめ)に光さし添ひすぎゆきし歳月の中にも咲ける白梅
 選者 永田和宏

ゆつくりと風に光をまぜながら岬の端(はな)に風車はまはる
 
 

 選歌(詠進者生年月日順 但し朗唱の順序は若い方から詠まれます)

 東京都 古川信行

燈台の光見ゆとの報告に一際高し了解の聲
(南方戦線へ輸送船に乗っていたが、アメリカの魚雷攻撃を受け、穴が開いた船でやっとの思いで帰国を果たした時の心情)
 静岡県 小川健二

選果機のベルトに乗りし我がみかん光センサーが糖度を示す
(150本のミカン栽培を80過ぎてもたった一人で一日10時間労働をする小川氏、収穫の喜びが溢れている)
 群馬県 笛木力三郎

冬晴れの谷川岳の耳二つ虚空に白き光をはなつ
(今は谷川岳に登れないが、妻と二人でいつも見ている谷川岳の威容に、元気を頂いておいでです)
 北海道 西出欣司

前照灯の光のなかに雪の降り始発列車は我が合図待つ
(一人雪のホームを保持し永年勤続していた駅員でも、未だに現役の気概を持って列車の安全を心から祈っている)
 兵庫県 玉川朱美

梅雨晴れの光くまなくそそぐ田に五指深く入れ地温はかれり
(夫婦で自給自作の生活だが、亡き母から教えて貰った地熱を測る方法を孫に伝えたいと強く思っている)
 長野県 久保田幸枝

焼きつくす光の記憶の消ゆる日のあれよとおもひあるなと思ふ
(引揚者の苦い思い出は未だに戦争へのトラウマとなっている。怨みには一切の救いはないが、反戦の意思は護持したい)
 大阪府 森脇洲子

我が面は光に向きてゐるらしき近づきて息子(こ)はシャッターを押す
(唯一目が見えない方で、何となく光を感じた喜びに溢れている。大阪の地元では当選し熱狂されていらっしゃるとか)
 東京都 野上 卓

あをあをとしたたる光三輪山に満ちて世界は夏とよばれる
(退職し寺社仏閣を訪問する日々の中、古式ゆかしい三輪山に感動し、生きる力となっている)
 福岡県 松枝哲哉

藍甕に浸して絞るわたの糸光にかざすとき匂ひ立つ
(祖父は藍染の人間国宝。藍染の仕事の中に先人先達への畏敬の念を感じる)
 京都府 後藤正樹

雲間より光射しくる中空へ百畳大凧揚がり鎮まる
(去年初めて地元の大凧揚げに参加し、大感激。大凧から頂いた勇気や元気をいつまでも持っていたい)

 

  Theme for the New Year’s Poetry Reading (2010) : HIKARI (light) 

  (天皇陛下御製と皇后陛下の御歌と東宮及び同妃殿下のお歌の英訳版)

 

  His Majesty the Emperor

 

Where rays of sunlight
Filter through the trees I see
In the middle of the path
Carpeted with fallen leaves
A clump of green grass growing.

 

Komorebi no
Hikari wo ukete
Ochiba shiku
Komichi no manaka
Kusa-ao mitari

 (Background of the poem)
Their Majesties were taking a walk in the Fukiage Garden in the Imperial Palace Grounds when His Majesty saw that, where sunlight filtered through the trees, green grass was growing on the path. This poem describes that scene.

  Her Majesty the Empress

 

As I walk by your side
The path stretches far ahead
Though ‘tis now evening
Yonder in the distance
A glow of a lingering light.

 

Kimi to yuku
Michi no hatate no
To-o shiroku
Yugurete nao
Hikari arurashi

 (Background of the poem)
Her Majesty composed this poem around April last year when Their Majesties celebrated their 50th wedding anniversary. The poem is Her Majesty’s impressions of a walk she took with His Majesty in the Imperial Palace Grounds early in the evening when some daylight still remained.

  His Imperial Highness the Crown Prince

 

The rays of the sun appear above the clouds. Fuji’s surface glows in red.

 (Background of the poem)
In the summer of 2008, the Crown Prince climbed Mt. Fuji.
This poem recalls how moved he was at that time by the sight of the sun’s light coloring the slopes of Mt. Fuji red as the first beams of dawn rose from the sea of clouds at his feet.

  Her Imperial Highness the Crown Princess

 

The wavelets rising on the pond catch the light of the winter sun and glitter brightly.

 (Background of the poem)
The Crown Princess enjoys her daily walk around the gardens of the Akasaka Palace.
This poem calls to mind her delight when she went on her stroll one mild winter’s morning at the surprisingly beautiful sparkling of the ripples on the Oike pond (“large pond”) in the quiet garden as they caught the sunlight.

 

万葉にもに遡る「歌会始」

宮中諸行事のなか、文化的に高い雰囲気をもつものが、歌会始です。毎年一月十日前後に、あらかじめ公表されたお題によって、広く国民の応募された入選短歌の優秀作を公にする行事ですが、宮中文化という中でも代表的な行事でしょう。今年は23,346首(うち海外から172首、点字41首)の応募が寄せられ、そのなかから選ばれた十首が(これを預選歌(よせんか)と呼ばれ、天皇・皇后両陛下の御前で披講(ひこう)されます。応募作は広くアメリカ、カナダ、ブラジル、韓国などを含む全世界から寄せられ、そのなかから優秀作を選ばれるのです。式場は宮殿正殿・松の間であり、歌会始委員、預選者、ついで各界および一般の陪聴者、さらに一部閣僚、議員、歌人、文化人その他約百名が着席なさいます。このあと、この儀の司会役である読師(どくじ=発声はしないが進行係である)、講師(こうじ=読み上げ)、発声(独唱=今年は近衛さんがご担当)、講頌(こうしょう=合唱)、及びそれぞれの控の方がたが着席され、また陛下から特に歌を詠進するよう召歌を求められた召人(めしうど)は過去17年間も選者を務めて来られた老歌人・武川忠一氏。ご高齢のため、同夫人が随行しておられました。こうして一同が黒塗り枠の透かし背もたれに菊紋散らしを施した、紫布地の小椅子に着席を終えたのち、皇族各殿下および預選歌の懐紙が式場中央の披講席の卓上に準備され、さらに侍従が皇后陛下のご懐紙を捧持して式場に入り、空席のままの皇后陛下のお机の上に置く。このあと天皇陛下がお出ましになられ、皇太子殿下(東宮)、同妃殿下(ご病気のためご欠席になられましたが、お歌の披講は御座いました)、秋篠宮殿下、常陸宮殿下、同妃殿下が従われます。ついで侍従・女官が両陛下ご着席の、菊紋模様の金欄地卓布を掛けた机上に御製の御懐紙を置かれ、このあと読師が参進して披講席について、歌会始の儀式が始まります。(テレビ中継はここから)。式次第は一般の方の選歌、選者代表のお歌、召歌(召人の歌)と続き、皇族代表として秋篠宮妃殿下のお歌、皇太子妃殿下のお歌、皇太子殿下のお歌、皇后陛下の御歌、天皇陛下御製へと続きます。今年のお題は「」。皇太子殿下と雅子妃殿下さまがご結婚された年も「」で、今年二度目のお題となりました。講師が、「年の始めにということをおおせごとによりてよめる歌」、つづいて「京都府、後藤の正樹」といった前置きで懐紙を捧げて節をつけずに詠み流します。読み終って発声に入り、古式にのっとったのどかで低い、しかし朗々たるよく透る声で、独特の節をつけて第一句を朗唱し、第二句目から講頌の四人が合唱風にのびやかに読み上げて、一首を終えるのです。朗唱が終り、預選者は一礼して着席、順次同じように(ただし二首目から「年の始めに」の言葉を省略する)繰り返された後、皇族の歌へと続きます。このあとの皇后陛下の御歌の場合は、講師が御懐紙を卓上からいただいて戻り、読師とともに起立して黙読、「光、ということをよませ給える妃(きさい)の宮の御歌~」と言い終るとともに参列者一同起立、講師の拝読ののち、二回の朗詠されて終るのです。次に講師は天皇陛下の御前に進み、お机の上のご懐紙をいただいて披講席に戻り、起立したまま読師とともに黙読、次いで拝読、会場の一同全員が起立して御製を三度朗唱し終って着席となります。(テレビ中継はここまで)。講師はこのあと懐紙を折り畳み、御前に進んで卓上に戻し、陛下がご退場となられます。ついで両陛下机上のご懐紙をそれぞれの侍従が捧持して退出ののち、参列者一同の退場となります。その間、式次第の一部始終は松の間両側の高天井から落ちる照明のもと、壁にはめこまれた薄墨色のガラス窓のなかのテレビ席から、全国に中継されるのです。このあと関係者に対して陛下よりのお言葉があり、また記念品の伝達、記念撮影、記者会見、お祝いの食事(「賜饒」)が続き、さらに懇談会や記帳などがあって「歌会始の儀」の全行事を終えるというものです。なお参列者はすべてモーニングコートまたは相当和服を召されます。

鎌倉時代にも既にあった歌会始は万葉時代にも見られるのですが、毎年単独で行われるようになったのは室町時代からです。従って600年の永き伝統になりましょうか。明治時代から一般からも募集され披講されたのですが、選歌となった一般人が天皇・皇后両陛下にお目通り叶って披講されたのは昭和25年からであります。営々と続く和歌の世界は1300年前の万葉集から続き、最もよく日本人の美徳と美意識を表現する「やまとごころ」、「やまとことば」として、これからも続けて行かれることを強く希望します。尚来年、平成23年度のお題は「葉」。宮内庁のホームページには一般公募要領が御座いますから、いかがでしょう、ご参加なされてみませんか。一般の方々の感動的な和歌が毎年の楽しみの一つですが、両陛下始めとする皇族方の御歌も厳しい世相を危惧なされたり、大変感動的な御歌ばかりです。

 

 

 

 振り向けば満月 及び 湖畔・残照に青鷺

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