沙羅の花 東林院 儚けく花映えの精進料理

 

 

 妙心寺 塔頭(たっちゅう)・東林院 「沙羅の花を愛でる会」にて

(この精進料理は 妙心寺料理方を務める精進料理「阿じろ」製の箸袋) 

尚宿坊にお泊りになりますと 西川和尚お手製の精進料理が直接ご堪能出来ます

 

 

 

 

              沙羅の花 東林院 儚けく花映えの精進料理

   

 先日我がブロ友のYoupvさんのブログ「京都写真」で、東林院の記事がまことに美しく表現されておりました。もうそんな時季かなぁと、季節の移り変わりは本当に早いものでありますね。東林院とは室町時代末期、享禄四年(1531)、細川氏綱が管領であった父・高国の菩提を弔うために建立された三友院という寺院に由来しますが、その後、戦国大名で秀吉や家康に仕えて連歌の第一人者としても知られた山名豊国は、弘治二年(1556)、妙心寺第五十一世・直指宗諤(じきしそうがく)禅師を開山として妙心寺山内に移設して再建され、寺名を「東林院」と改めて、爾来山名家の菩提寺となっております。その後天保年間(1830~43)に本堂が再建され、平成九年(1997)には本堂解体修理が行われました。寺宝として、狩野元信筆の細川高国公肖像画や山名豊国ゆかりの鎧や兜等があります。

 さて、東林院は、本堂前の庭園に樹齢三百数十年以上の沙羅双樹(夏椿)の古木があることから、「沙羅双樹の寺」と呼ばれています。日本の沙羅双樹はインドのものとは幾らか種類が違うようですが、釈迦が入滅された際、一斉にこの花が咲き、その死を悲しんだと言われ、古来仏教とゆかりの深い木として有名になりました。「平家物語」の冒頭で、「祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり 沙羅双樹の花の色 盛者必衰の理(ことわり)をあらわす」と書かれ、儚いものの象徴として登場するように、沙羅双樹は梅雨の季節に白い椿のような花を総称としてつけますが、朝に咲き、夕には散る「一日花」で、梅雨の雨に打たれるとすぐ散ってしまうことでも知られています。古来諸行無常を感じさせる花として茶人や歌人にも愛され、今も多くの人がこの季節に東林院を挙って訪れています。尚お寺では、人の生涯も同様に儚いものだから、毎日を二度と来ない一日として大切に過ごしましょうと解説されておりますが。

 「沙羅の花を愛でる会」は、昭和五十二年(1977)に第一回が開かれ、以来このお寺は「沙羅双樹の花の寺」と呼ばれるようになりました。本堂前に「沙羅林」の中心となる高さ15m、樹齢三百数十年以上の古木は、平成十四年(2002に周りの環境変化により急激に衰え、手当てをするもついに枯れてしまいました。幸いに古木によって結実した種子から二世の若木が残り、平成十八年(2006)に「沙羅を愛でる会」の三十回記念行事として移植されています。尚、住職は元の古木から観音菩薩像、結界、そして大きな数珠を作成されました。このお数珠は遂に朽ち果てた古木に優しくかけられています。「沙羅林」には10数本の沙羅双樹が植えられておりますが、特に庭の左には樹齢60年程の木は最も元気なようで、苔生した庭園に美しい花びらを散らせていました。6月末の大祓えの儀の頃に、「沙羅を愛でる会」は終わりを告げます。雨中にさわさわと咲き、散華のように爽やかに見える沙羅の花(別名・ナツツバキ)は一見に値い致します。

 今回の公開は「沙羅林」の鑑賞のみですが、他に書院前の枯山水庭園によっても知られます。こちらは沙羅の世界と対をなす蓬莱の世界を表し、水琴窟(一壷天)の音色も印象的です。春秋に住職手作りの「梵燈」によるろうそくの灯が、幻想的な夜間特別拝観「梵燈のあかりに親しむ会」で公開されています。また中庭は「千両の庭」で、赤や黄色の実をつける正月には「小豆粥の会」が催されます。その他、宿坊に宿泊すれば西川玄房和尚直々の手作り精進料理を堪能することも出来、また精進料理達人の西川玄房和尚により、毎週火曜日と金曜日に、「精進料理を体験する会」が開催されています。このお寺は普段一般公開されていないのですが、「小豆粥で初春を祝う会」1月12日(月・祝)~31日(土) 午前11時~午後3時、「小豆粥・散飯式」午前10時~1月12日(月・祝)、「沙羅の花を愛でる会」6月12日~30日、「梵燈(ぼんとう)のあかりに親しむ会」10月上旬、「精進料理を体験する会」毎週火曜日・金曜日などと、それぞれに参加ご希望の方は往復はがきかお電話にてお問い合わせくださりませ。境内で無農薬の京野菜を自前で作っている和尚の軽妙で意味深いお話も大変楽しみです。もっとも特別公開を楽しみにされている方は、この「沙羅を愛でる会」が多いためか、連日多くの観光客が集まっているようですが、定員60名までだと聞いています。精進料理の価格は少しだけお高いのですが、お抹茶とお菓子(料理も)だけでも充分楽しく美味しいので、ご機会が有れば是非ご訪問されてもよいかと存じます。妙心寺には塔頭は40塔以上もありますが、このお寺は一年を通して、四季を感じさせてくれる美しいお寺です。

 

 

 花びらがついたまま潔く 目の前で五弁の花びらごと ボタッと落花します

 

 序でにと言っては何ですが、「沙羅を愛でる会」に出てくる精進料理のお話しを少々。小豆粥も沙羅の時も、お膳は妙心寺調理方を勤められる「阿じろ」さんのご膳です。この賑わいを西川和尚さんは「お寺は人が集まっていただくところ」と仰っていますが、どうやらこのご趣旨も充分にご理解されているようです。さてお料理の中身ですが、酢れんこんとか巻きゆばなどの五種盛り、小松菜の芥子味噌和え、卵湯葉のお平(平椀)と国清汁(こくしょうじる)、白いご飯にひじきしぐれがついている。そして二の膳は胡麻豆腐とかも茄子のでんがくと香の物。かも茄子の横になんやらちょっとした黒いもの。廊下に張り出された献立表には、「なす皮」と書いてあった。茄子の皮、まぁ何と言うことでしょう。これこそ“生きものは生かすこと”と言う精進料理の心そのもののようなものですネ。半分に切ったかも茄子は柔らかいように、ふちだけを残して、皮はごつう厚く剥いてあり、その皮を集めて油で炒め、味噌炊きしたものやった。白胡麻もふってあり、これじゃ始末な京女も脱帽じゃろうとほくそえむ。皮には果肉がいっぱいついているので、頂けるものをほかす(捨てる)のは冥加が悪い。物のイノチは大事にせないかんと、お茄子の皮に寄せる心掛けであるのでした。(その年によって献立は違います)

   ① 木皿  酢れんこん 紫蘇巻き 三度豆 小巻湯葉 茄子

   ② 汁  国済汁(こくしょうじる)=味噌仕立て おだい にんじん しいたけ お揚げ 三度豆 みつ葉

   ③ お平  揚げ卵湯葉 みつ葉 もみじ麩 粉山椒

   ④ 木皿  小松菜の芥子味噌和え 紅たで添え

   ⑤ ご飯とひじきしぐれ

   ⑥ ねりもの  胡麻豆腐 山葵添え

   ⑦ お焼き物  かも茄子田楽 なす皮=田楽にした時剥いた茄子の皮を、油で炒めて、味噌炊きにし 白胡麻をふる

   ⑧ 香の物  たくあん漬け 塩こんぶ らっきょう

                    これだけで合計たった5千円代だったら如何でしょ、私には大変安かったです 余りにも美味しかったですもの!

 東林院の自前の庭には次々に旬のものが植えてあり、西川和尚さんが楽しみでお野菜を作っておられます。無論無農薬野菜ですが、精進料理の達人らしく和尚のお目立ての畑であります。梅の頃、どうやって採るのかを注意深く見ておりました。そしたら長い竿で荒っぽくバシバシと叩いているのです。これにはびっくり。あっと言う間に枝の上のほうから面白いようにパラパラと落ちて来ました。私も必死になって梅を拾います。ただ梅ノ木の枝が大丈夫やろかぁと思うていたら、和尚さんケラケラ笑い、「櫻伐る馬鹿、梅伐らぬ馬鹿じゃ」と言うていらっしゃっいました。料理好きの和尚さんは調理師の免許を勿論お持ちで、普段は本山にお勤めしていらっしゃいますが、その間にこうした畑仕事やお掃除などの雑務や作務をやってなさるのです。実にお忙しい方でも、忙しい顔付きをしたのを見たことがありませぬ。それどころか写真の腕もプロ並みで、ちょっとした遊び心もあるらしいから、ほっとします。いやはや流石に臨済禅のご僧侶さまで、普段から厳しい精進してなさているのかと思われたことでありました。

 

 

 ひやむぎの味噌かけ 東林院さん直伝の夏のひやむぎの戴き方

 

 オマケにもう、お一つ。このムシムシする梅雨の時期に、あっさり系のひやむぎの戴き方は如何でしょう。ひやむぎは一般的に強力粉が使われているので、湯がくのにちょっとお手間が掛かります。けれども食欲がない時季でも咽喉越しがよく、いっぱい戴けるのです。ひやむぎは湯がいてからいかき(ザル)にあげて、水気を切っておきます。教わった味噌ダレは赤味噌にお砂糖と味醂を入れて柔らかめに練り、粉山椒を混ぜて、赤い山椒味噌を作るというものでした。ひやむぎの上に山椒味噌を掛けましたら、白胡麻をパラッと散らします。シコシコとした滑らかないい歯ざわりのひやむぎが堪りません。勿論ハマボウフウや茗荷や青紫蘇や花穂紫蘇やオクラなどの日本のハーブを切り刻んで掛けてお召し上がりになられても結構なものです。東林院で教えて戴いた四季折々のお料理の一つでもあります。こうしたお料理にこそ、和食本来の本質があるように思えてなりませぬ。私の場合、更にこの味噌ダレに梅肉を足す癖もあるんですヨ。妻も杏も、何と最近歩き始めた大風まで、これをモリモリと食べているような有様、まっこと嬉しい限りの夕べです。

広告
カテゴリー: 季節の移ろいの中で パーマリンク

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

%s と連携中