『猫のしっぽ カエルの手』 Vol 14 京都・大原 ベニシアの手づくり暮らし

 

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                      『猫のしっぽ カエルの手』   Vol 14

                  京都・大原 ベニシアの手づくり暮らし

 

      

            Vol 14 過ぎゆく夏

 

 夏の終わり、山に囲まれた盆地の大原はまだまだ厳しい残暑が続く。けれども田んぼでは稲が穂をつけ始め、少しずつ季節が変わっていることを教えてくれる。13年前ベニシアさんが家族とともに越してきた築100年の古民家。庭に咲く夏の花たちも陽射しを惜しむように、目一杯の花びらを開かせる。遅れてやってきた今年の夏は短い。ベニシアさん、朝の日課である野菜の収穫に向かう。三ヶ月前畑に植えた夏野菜たち、今年は災難続きだった。「何か、昨日台風があったからぁ、その前にお猿さんたち、いっぱい来たのね。お猿さんたちがお腹が空いていたから。ほんでこの夏は雨が多いから、太陽が足りないのね、難しい」と独り言。雨が多かった今年の大原。その上山の上の猿たちが里に下りて来て、里を荒らしてしまった。うまく行かないこともある。それでも今日食べる分の夏野菜は充分収穫出来た。ベニシアさん、採れ立ての夏野菜で、朝食を作る。「バジルコは手でやらないと黒くなる」と言いながらキッチンに立つ。夏休み、山岳写真家の夫・正さんは山へ。息子の悠仁君はクラブ活動でいない。待っていたのは夏休みの間、ベニシアさんのところに遊びに来ている孫のジョー君だった。「戴きまぁ~す!」。ゆっくりと時間を掛けて朝御飯をしっかりと戴く。夏の間、ベニシアさんが心がけていることだ。朝食後ジョー君は近所も友人に逢いに行く。

 

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  ベニシアさんも、今日は嵯峨野に住む友人に逢いに行く。大原の南西、車で1時間ほどのところにある嵯峨野、その風光明媚な環境から、昔から行楽地や別荘地として栄えて来た。ベニシアさんは大原とはまた違ったこの辺りの自然が大好き。途中ちょっと足を伸ばしたのは高山寺。「日本最古之茶園」とある通り、ここには鎌倉時代初期に、栄西が中国から持ち帰った茶を、日本で初めて栽培したと言われる茶園がある。「日本の一番、或る意味で、お茶は日本のハーブですから、この植物はもしかして700年ぐらいずっとここに暮らしているっていうか、植物の歴史って面白いねぇ。だって植物のお陰で、私たちは生きているし、こうしてお茶の最初の場所が見れるのは、何か不思議な感じがするのね」とベニシアさん。700年前から大切に育てられてきたお茶の木。いにしえの人々の暮らしに、思いを馳せる。

 

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 約束の時間、この嵯峨野に住むベニシアさんの大好きな友人を訪ねた。「久し振りぃ!」、「おぉ久し振りね」、「お邪魔します」、「どうぞどうぞ!」、迎えてくれたのは陶芸家の中村明久さん(61歳)、奥さんも出てきた。モダンなリビングで、妻・聡子さんが抹茶を点ててくれた。自分の器に、抹茶でもてなすのが中村流。肩肘張った茶室ではなく、ソファーで寛いで飲んで欲しいと言う。「有難う、あっこのブルー、わたし大好き!戴きまぁ~す。ぅん美味しい。蝉が鳴いて、何か美味しいの、このお茶味わっていると」、「うん、これは夏だけのお茶碗」、「うん涼しいねぇ」、「凄い大きいですよ、18cm以上もある。普通こんなん大きいのがないって言われるけど、でも敢えてこの大きさに。こうやって飲んでいると、お茶が入ってくるこの距離感なんかがあるでしょ、ゆぅっくり、それ(お茶)を感じ取れる茶を飲んで欲しい」、「その時の気分はリラックスして、何か、それって今を感じるっていう感じやねぇ」。

 

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           <Venetia’s Friends> (美を見い出す)

 伝統的な技法を守りながらも、独特な色や形を生み出す中村さんの作品は、京都の老舗料亭などの茶室で使われている。中村さんが今創っているのは、抹茶茶碗。厳しい目を持つ人が多い京都という土地で、陶芸家として認められる道のりは永かった。けれども中村さん、陶芸家には偶然なったものだと言う。東京の大学を卒業し、自分の道を見つけられずにいた頃、友人に誘われて、茨城県の笠間焼きの工房に行ったのが、陶芸との出会いだ。でも自分が創りたい焼き物はどんな物なのか、分からないまま。結局京都へ戻って来た。「母親がお茶の師匠をしてまして、自分の生まれ育ったとこも、純数奇屋造りの200年ぐらい経ったような家だったので、焼き物というのが目の前にあったというか、知らず知らずのうちに、そういうのを観ていたと言うか、だから京都へ来てからですね、本当にこう自分のやりたい方向性みたいなものが少しずつ見えてきて」。生まれ育った実家で、自分の進むべき道を見い出した中村さん。中でも朝鮮半島、李朝時代の焼き物に魅かれた。例えば、これは成型した赤土の上に、白い泥を掛け、薄い土の膜を張った粉引(こびき)という技法、暖かな目のある白が特徴だが、使っているうちに、白が薄れて、独特な風合いをかもし出す。中村さんは伝統美の中に、少し歪(いびつ)な隠れた美を見い出し、自分の作品に取り入れることに夢中になった。これはベニシアさんが抹茶を戴いた平茶碗で、粉引の上に青い釉薬(ゆうやく)を塗った瑠璃地と呼ばれるもので、中心にはワザと砂を置いた跡を残している。「こういうものもまぁ、重ね焼きっていうか、窯にたくさん入れる為に、こういう器を重ねた跡なんですよね。これっていうのは向こう(朝鮮)では何て言うんでしょうかねぇ、見方によっては傷か何か粗雑なものであるという捉え方なんでしょうけど、これが日本に入って来た時には、日本人の数奇者(お茶人さん)なんかの眼に止まった時は、これは面白いじゃないか、綺麗じゃないかとか。それと実際実用ということを兼ねると、これだけ平たいお茶碗で、これ(傷)がないと、茶筅で点て難いんですよ。やっぱりこれがあることによって、お茶が点て易いというか、過去にあって不完全というか、もしかしたらデメリットである部分が逆に利点に生かして行く。そしてそれを楽しむという文化ですか。僕も好きなんですよ。中村さんの作品の魅力は、実際に使うことによって、一段と輝く。これはもともと塩を入れていた壺を茶碗に見立てた「塩げ茶碗」と言う。器の使い方は自由だと言い切る中村さん。使う人は創り手の創る想像以上に超える発想で、使って欲しいと願っている。そんな中村さんの良き理解者であるベニシアさんは普段のお惣菜にも、どんどん中村さんの器を使っている。「ホント素敵よねぇ、まぁいっぱいあるぅ」、中村さんの作品に囲まれて、ちょっと夢見心地のベニシアさん。「いやぁなんか、小さいお皿、素敵よね」、「これは高杯(たかつき)と言ってサカヅキの一種、これも本来は祭器、神さんにお供えするために使うヤツ。そういう形をヒントにして僕が創っただけのことです」、「お洒落やねぇこれっ!」。ひょんなことから自分の進むべき道を見つけた中村さん、まだまだ試行錯誤を繰り返している。新作の茶碗の窯出し、ベニシアさんも見せてもらう。「すっごいたくさん創ったねぇ」、「うん大体100ぐらい」、「100?」、「でもそのうち幾つかなぁ、2~3個かも知れないなぁ」、「そんなことはない!」、「いやそんなもんよ、ってことは常に300~400、或いは1000個ぐらい創らなぁ、なかなかいいもんは出逢わない」。納得する茶碗が出来るまでには1000個も焼くこともあるという中村さん。「凄い!これ素敵ぃ~~!」、「いや焼き過ぎ、ちょっと焦げた(笑い)」、「でも凄い素敵よ、中村さん、完璧主義だから。素敵よ」、「(笑い)ぅうん、意外と、そんなもんなのよねぇ。ぅわぁ~今度の窯全部失敗やなんて思うでしょ!でもヒト(他人)から見たら、いやそんなことはないよ、これは窯全部がいいと思ったら、他人から見たら全然よくなかったり、だから判らない」。迷いながらも自分にとって本当に大切なものを求め続ける。そんな人生も悪くないと二人は思っている。

 

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           <Venetia’s Essay> (夢をかなえる)

 「わたしの最初の夢は、大勢の女の子と同じく、バレリーナになることでした。6年ほどバレエを習いました。或る時、歌手を目指したらどうかと言われました。そこでフォークグループを作りましたが、運命の悪戯で、この夢も破れてしまいました。この世で起きることは偶然ではありません。何事も明るい面に眼を向ければ、人生で出逢う困難も、学びの機会になります。誰でも夢はあるでしょう。予想もしないことが起こって状況が変わり、夢の実現まで永い年月が掛かることもあるでしょう。頭も心もオープンにしておけばいいのです。どんな変化に対してもオープンであれば、人生の本当の筋道が見えて来るでしょう」。

 

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  夏の間、成長した庭の植物たち、秋が来る前に整理する。「今から、これ(ギボウシ)を出そうと思っているんですよ。二つとも大きくなったから、何か他のものを植えたいなぁ。こういう庭仕事を時々する。腕が強くなかったら、なかなか」。13年前、ベニシアさんは大原に越して来た時、庭に植えたギボウシ、そのうち一つを別の場所に移し、違う植物を植える。しっかり根を張った植物を抜くのは容易ではない。「英語の諺に、『No Gain witout Pain』、Gainはプラス、プラスとなって欲しい。その前にちょっと苦労しないとなぁ」。庭作りに魔法はない。でも手を掛けてあげれば、ちゃんとご褒美があることをベニシアさんは知っている。ギボウシを抜いた跡に、新しいハーブの苗を植える。「あのぉミソハギを植えたいと思うの。ミソハギは大体お盆の花、実はハーブですね、パーポルストレイと言うんです。でもこの土をプレゼントします」。植え替えは、元の土が痩せているので、充分に堆肥をあげてから植える。ベニシアさんの庭はベニシアさんの作品。ここにも完成と言う終わりはない。ベニシアさん、元気過ぎるほどのローズゼラニウムの葉っぱを剪定する。「こっちは香りあるローズゼラニウムって言うんですけど、今日は暑いし、シャーベットを作ります。で、半分剪定のつもりで、半分はお洒落で」と。

 

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        <Venetia’s Herb Recipe> (ローズゼラニウムのシャーベット)

 「ゼラニウムの種類はたくさんあるから、楽しみのために、色んなお菓子に入れることが出来ます。これは例えば、ミントゼラニウム、時々チョコレートケーキに入れます。又これはエイプリコット。これ直ぐ分かる、レモン!で、これもローズで可愛い花があります。神さまが遊んだみたいな色んな葉っぱを作っています。今日はローズゼラニウム、ちょっと上品なシャーベットを作ります。最初はお湯の中に、10gのローズゼラニウムを入れ、10分ほど煎じます。待っている間、レモンジュースを作る。あっ出来ましたね。そしたらこれを漉します。ゼラニウムの葉っぱをザルで漉す。煎じた液を鍋に戻して。砂糖。レモン汁を加え、1時間ほど冷凍庫に入れ、半分凍らせます。その間に下準備。ボールにあけた卵白をハンドミキサーで半分泡立て、メレンゲを作る。このメレンゲを加えることで、シャーベットならではのフワフワした食感が得られます。半分凍らせると、こんな感じ」。それにメレンゲと一緒に、少しずつ加えながら、ハンドミキサーで満遍なく混ぜて行く。シャーベットはお料理の間に出して、口をさっぱりさせたり、子供のオヤツにしたり、保存が利くから便利。容器に移して冷凍庫に入れ、再び半分凍らせる。この作業を4~5回繰り返すと、口当りの良いシャーベットが出来上がる。ローズゼラニウムのシャーベットを、中村さんの器に盛れば、涼しさもひとしお!

 

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         <Venetia’s Diary> (ヒグラシの呼び声

 「夏の間、わたしはヒグラシのラブコールで、明け方眼が覚めます。涼しい空気を吸い込んで、わたしは庭へ向かいます。草取りやマルチングの作業をします。土が常に柔らかい状態であれば、植物は地下水のある地中深く根を張ることが出来ます。黄金色の日ざしが大原の里に差し込んできます。わたしは道具を片付けると、日ざしの入らない我が家に戻ります。ひんやりした畳の上に横たわり、庭を眺めていたら、いつの間にか眠っていました」。

 

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 3時のティータイム。孫のジョー君と一緒に、ローズゼラニウムのシャーベットで、熱くなった身体をクールダウンさせる。「今日も暑かったなぁ」、逝く夏を惜しむひと時!

 

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        <ローズゼラニウムのシャーベット>

  材料;ローズゼラニウム10g 卵白1個分 レモン汁大1個分 砂糖大さじ6  水300ml

  ① ローズゼラニウムを煎じて 砂糖・レモン汁を加え 半冷凍する

  ② 卵白を混ぜて ①と少しずつ混ぜ合わせながら 泡立て 再び半冷凍する

  ③ 半冷凍したものを 泡立てる作業を4~5回繰り返して出来上がり

 

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  ベニシアさん 総合記事   『京都・大原 ベニシアさんの手づくりの四季と暮らし』

      その後の連続放映  『猫のしっぽ カエルの手』 Vol 1 春を呼ぶ水仙

                     『猫のしっぽ カエルの手』 Vol 2 朝市の仲間たち

                     『猫のしっぽ カエルの手』 Vol 3 春の摘み草 Vol 4 春を祝う Vol 5 陽光に誘われて

                     『猫のしっぽ カエルの手』 Vol 6 古き良き友 Vol 7 風薫る庭

                     『猫のしっぽ カエルの手』 Vol 8 初夏の里歩き Vol 9 夏を迎える

                     『猫のしっぽ カエルの手』 Vol 10 もてなしの心 Vol 11 雨の日を楽しむ

                     『猫のしっぽ カエルの手』 Vol 12 夏の大地の贈りもの

                     『猫のしっぽ カエルの手』 Vol 13 夏の思い出

 

   総合感想など          ベニシアさん 神のめでたきに

                       『ベニシアさんのクリスマス 猫のしっぽ カエルの手 Vol 24 クリスマスがやってくる』 

 

 

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